MRI室で隠し持った銃が暴発、男性が死亡 ブラジル

MRI(磁気共鳴画像装置)は、あらゆる強磁性体を引き付ける強力な磁場を生む(Getty Images)

MRI(磁気共鳴画像装置)検査室には、絶対に銃を持ち込んではいけない。

さもないと、ブラジルの弁護士の男性(40)と同じ悲劇的な運命をたどることになるかもしれない。同国メディアによると、男性は1月16日、サンパウロの病院で、腰に拳銃を隠し持ったまま母親がMRI検査を受ける部屋に入った。するとMRIにより発生した磁場によって銃が暴発し、弾丸が腹部を直撃。重傷を負って別の病院に緊急搬送されたが、2月6日に死亡した。

MRIのある部屋に入る前に、すべての強磁性金属を外すように言われるのには理由がある。MRIの「M」は「magetic(磁気)」の略で、装置が生み出す磁場は、冷蔵庫の扉にくっついているような磁石の磁場よりもはるかに強力だ。GEによると、MRIは地球の磁場の14万倍の強さの磁気を発生させることができる。この磁場は、MRIの金属コイルを通じて送られる電気パルスによって作られる。MRIが発するあのガンガンという音は、パルスがコイルを振動させる際の音だ。

MRIの「I」は「imaging(画像)」の略で、MRIの一番の目的は生体の複雑な画像を撮影することにある。装置が生み出す強力な磁場を利用して撮影した画像は、患者の体がどう機能しているかを調べるのに役立ち、靭帯(じんたい)損傷や動脈瘤(りゅう)、脳卒中、がんなどの診断に使われる。この磁場がいかに強力であるかは、以下のYouTube(ユーチューブ)チャンネル「practiCal fMRI」の動画を見れば分かるだろう。


MRIによりステープラーが破壊されたことから分かるように、これは恐ろしく強力な磁気だ。MRIが検査を実行していない時でも、磁場が常にオンになっていると思っていた方がよい。装置の中に患者がいないからと言って、横でスクリュードライバーのジャグリングを披露してはいけない。MRI検査室に入る前に、金属製の宝飾品やフォーク、スプーン、鍵、ステープラー、万年筆、チェーン、バール、ジッパー、鉄琴、シンバル、鉄床、火炎放射器、エアフライヤー、銛(もり)、矛、そしてもちろん銃を置いていくよう求められるのは、それが理由だ。

しかし、ブラジルの男性はどうやらその決まりに従わなかったようだ。CNNブラジルによると、男性はすべての手順に従うことに同意する書式に署名したが、拳銃をMRI室に持ち込むことを病院担当者に伝えていなかった。ニューヨーク・ポストはさらに、男性が「TikTokの8000人以上のフォロワーに向けて、銃を支持するコンテンツを頻繁に投稿していた」とも報じた。

MRI検査室に銃を持ち込む理由はどこにもない。常に銃を所持する自由を主張することは結構だが、部屋の中で自分のまわりに金属の物体を自由に飛び回らせることに意味はあるのだろうか? 放射線技師やMRIに襲われる可能性は極めて低いのに、なぜ銃による自衛が必要なのか? MRIとけんかをになったら、勝つのはおそらくMRIだ。もし強力な磁場と勝負したいのであれば、銃は持っていかないことだ。

forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫

ForbesBrandVoice

人気記事