次は具体的に、自主開催を実現する仕組みづくりに求められる考え方を整理していきたい。
自主開催支援
これまでは現地のパートナーをクライアントと位置付け、自分らがサービス提供することを主なビジネスモデルとしていた。しかし今後は、それだけではなく佐世保のように自主開催を希望するエリアを支援する体制を整える事で、自分らの負担も減らしながらも、全国に「つなげる30人」が広がる可能性が高まると感じた。また業務委託案件であったとしても、例えば3年をかけてノウハウ移転を前提とした計画を練るなどして、「予算の切れ目が事業の切れ目」にならないよう、「つなげる30人」を地域に根付かせる必要がある。
エリア同士による相互支援
一方、そんなに単純にノウハウや志のようなものは横展開できない事も分かっている。そんな中、東京都文京区から全国へと広がった「こども宅食応援団」との意見交換の中で、「団体は、全国の加盟団体同士がお互いにノウハウや事例を学び合い教え合う場をコーディネートしている」という話を聞き、この仕組みを応用できると感じた。これまでは、各エリアの主催者達は私達とのつながりはあるが、主催者同士のつながりはほぼ無かった。しかし、このつながりを作り、積極的にノウハウを公開・共有することで相互支援が可能になるのではと考えた。こうすれば、自分らの負担も減らしながらも、全国の「つなげる30人」の実践的かつ最先端のノウハウが集約されていく可能性が高まるだろう。
経済的合理性から離れた、公共性の高い組織での運営
これまでは、株式会社Slow Innovationが実質「つなげる30人」の取りまとめを行っていたが、どうしても企業である以上経済的合理性とのジレンマは常に抱えていた。例えば、「全国のメンバーのデータベースをつくる」「全国のメンバーが交流できる定例会を開催をする」「オウンドメディアでグッドプラクティスを発信する」「学術的な研究を試みる」などの「大事なことだが、すぐにお金にはなりにくい」事業の優先順位は少ないリソースの中で上げることは難しかった。
しかし、中立的な非営利組織として一般社団法人を設立し、そこが上記のような事業を実施運営することで、より理念に基づいた行動を担保でき、また共感する人やコミュニティを増やしていけると感じたのだ。
上記のような流れから、株式会社Slow Innovationのメンバーを中心に、2022年に「一般社団法人つなげる30人」を登記し、2023年から本格的スタートすることとなった。
これまではクライアントだったエリアを「加盟団体」にして、実践共同体の一員として相互支援を行う仕組み「つなげる30人リーグ」を立ち上げたり、全国のOBOGを含む「30人メンバー」のデータベース化を「つなげる30人図鑑」と名づけて進めたり、様々な事業の立ち上げ準備のためにエネルギーを使っている。今後は2030年までに全国30地域での展開を目指していきたい。