4. 開催都市規模の課題
当初は横浜・名古屋・京都・広島などの政令指定都市を中心に開催実績をつくってきたが、その後、中核都市クラスからの相談が増えてきた。ありがたい一方、大都市と比較し様々な規模が異なるのも事実で、正直、稼働コストに対し予算の見合わないケースも出てきた。
しかし、「つなげる30人」を全国に広めていくという目標と照らし合わせた際、今後そのような都市であっても、対応できるような体制を作っておく必要があったが、上記のように労働集約型なモデルではいつか限界が来ることは感じていた。
以上のような課題感を持つ中、2022年度に、「横浜」と「佐世保」で(どちらも港町であることは偶然であろうか)変化の兆しが起こり始め、今後の横展開の方策に関して多くの示唆を得ることが出来た。
「半学半教」の仕組みで運営する横浜
もともと「半学半教」という言葉は、慶應義塾の教育理念にもなっており、「教える者と学ぶ者との師弟の分を定めず、先に学んだ者が後で学ぼうとする者を教える。 教員と学生も半分は教えて、半分は学び続ける」とされている概念だ。まさにこれを実践しているのが横浜の現場であった。初年度こそ私がフルコミットしたものの、2年目は1期生が運営を、そして3年目を2期生が運営を行うことで、持続可能な運営を行っている。これは発起人の一人でもある横浜市立大学の芦澤美智子先生と吉永崇史先生がそのような運営形態を当初から構想し、実践していたのだ。
この仕組みを採用することで、我々が稼働せずとも地域内で人材育成が進み、数カ年を通じて完全にノウハウが移転できるイメージを持つことができた。
また内部運営をすることで、外部への業務委託運営コストを下げ、多額の予算を必要としない運営モデルへ近づくことができるのではと感じたし、都市の規模を問わずこの仕組みを構築するイメージも持てた。
「自主開催」の道を選んだ佐世保
渋谷区と佐世保市が防災協定を締結している関係でご縁を頂き、佐世保の有志のチームから2022年に相談を受け始めた。これまでの事例としては珍しく、当初から予算がないため自主運営を希望している事だった。正直、当初はどのように対応すべきか悩んだが、これも一つの挑戦と捉え、現地メンバーと協議を重ね、「私が初回と最終回は現地に赴く」「進行資料などを共有するのみ」という取り決めを行い、スタートすることとなった。
結果的に、現地メンバーの努力と創意工夫によって「つなげる30人」が体現したい世界が実現しており、自主開催の可能性を十分感じることができた。
このように従来の労働集約型モデルとは異なる横浜と佐世保の事例をきっかけに、今後、より多くの地域に「つなげる30人」を展開していくための体制について、多くの方とのディスカッションを繰り返していった。
そこで下記のように、横軸に主催元を、縦軸に予算を軸にして整理を行った。スケールのためには、「左下」の佐世保のような地域を応援し、自分たちで開催していけるような仕組みをつくることではないかと考えるに至った。