国内

2023.08.22

まちづくりをローカルに横展開する方法 4つの壁とノウハウ移転

長崎・佐世保で自主開催された、まちづくりプロジェクト「つなげる30人」

地域で様々な活動をする方にとって、その取り組みを全国に横展開し、スケールさせていきたいと頭をよぎる事が多いかもしれない。

この記事では、組織の垣根を越えたクロスセクターによるまちづくりプロジェクト「つなげる30人」という仕組みを横展開してきた経緯や、その中で見えてきた課題や変化の兆しなどを整理しながら、新しい横展開の仕組みについて書いていきたい。


横展開で見えた課題やジレンマ

「つなげる30人」は、2016年に渋谷区で立ち上げた頃から定型化し、全国に展開していく構想はあった。実際に2019年から名古屋市や京都市などを皮切りに、主に行政や大学などをパートナーとして、全国の各都市に拡がり、コロナ禍も経て2022年時点では、合計12地域で開催実績を持つに至った。
渋谷から始まった「つなげる30人」プロジェクト

渋谷から始まった「つなげる30人」プロジェクト


また、全国の自治体や、有志メンバーから「自分のエリアでも『つなげる30人』を立ち上げたい。どうしたら良いのか相談に乗って欲しい」という問い合わせも増え、一見この横展開は事業としても順調に、成長し、成功しているかのように見えた。

しかし、どのような形で横展開をし続けていくのがベストなのか暗中模索しながらも、大半は業務委託として自身が現地へ赴き、ファシリテーション及びコンサルティングを行う労働集約型のモデルで走り続けていた。

その結果、以下のような課題・ジレンマ・限界を抱え、横展開の方法について再検討する必要性が出てきた。

 1. 稼働コストの問題


コロナ禍に、オンラインセッションが増えたことで、複数のエリアの案件を同時に対応することはギリギリできていたが、コロナが明けた事によって移動コストが急激に上がった。

過密スケジュールは結果的に仕事の質を落としていく感覚も感じた。この事をふまえ、早急にノウハウを体系化し、「出来る人を増やす」事をしないと自分で自分の首を締め続けると感じていた。

 2. 地域内の人材育成面やノウハウ移転の課題


前述の「出来る人を増やす」ために、人材を育成する必要性があったが、「つなげる30人」のプロデューサーやファシリテーターには「業務スキル」に加え、「地域への想いや使命感」や「クロスセクターの幅広い人脈」など様々な暗黙的な絶対必要条件があると感じていた。そのため適切な人材育成方法について検討が進まぬまま走り続けていた。

また、いま振り返れば、現地のパートナーとの契約形態にも課題があった。基本的には「ノウハウ移転」を前提をしない「業務委託関係」だったため、複数の自治体では契約任期満了となった後、誰も引き継ぐ事が出来なかった。

ビジネスとしてドライに割り切ればそれはそれで構わないのだが、「果たしてこういう事が我々のしたかったことなのだろうか。本当はノウハウを移転して我々が去った後も「つなげる30人」の仕組みとコミュニティが残り続ける事を目指さなければならないのではいか」というジレンマを感じていた。

 3. 予算化の課題


冒頭のように「立ち上げたいから、相談に乗って欲しい」という場合、最初から予算化されてないケースが多い。

何の案件でもそうかもしれないが、いわゆる「予算化」には以下の3つがある。

1. ゼロから予算化
2. 一度ついた予算の継続
3. 途絶えた予算の再予算化

いくら現地の想いのあるパートナーが推進し、調整を試みたとしても案件化する確約はなく、最後は時の運だったりする。

当然、我々としても共に予算化に向けて創意工夫を凝らすが、散々奔走した結果、「ごめんなさい」となるケースも多く経験してきた。これは仕方ない事だし、責めるわけではないが、このような予算化過程に伴走するリソースにも限界があることを感じていた。
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文=加生健太朗

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