バイオ

2023.08.25 07:00

クジラとの衝突防止など、海を守るロボット技術6選

督 あかり

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地球の生物にとって、無くてはならない存在である海への負荷が、深刻化しています。

世界経済フォーラムの「フレンズ・オブ・オーシャン・アクション(Friends of Ocean Action)」によると、健全な海を取り戻す時間はまだ残されています。

本稿では、海洋環境の保護に貢献しているロボットを紹介します。WEFのアジェンダより転載します。


地球の表面の約4分の3を占め、地球上の生物の80%が生息する海。生命が存続する上でなくてはならない存在であるその海が、今、かつてないほど深刻な脅威にさらされており、未来に向けて海洋保護の取り組みが進められています。そこで力を発揮しているのが、ロボット技術です。

海は、地球上に排出された二酸化炭素の約3分の1を吸収するとともに、人間活動に伴う地球温暖化によって発生した余剰熱の90%を吸収しています。

海が直面する課題に取り組むことを目的とし、世界経済フォーラムが主催する世界のリーダーの連合体「フレンズ・オブ・オーシャン・アクション(Friends of Ocean Action)」は、海を救うための時間はまだ残されているとして、次のように述べています。

「私たち人間には、海を健全な状態に戻すための知識、力、技術があります。人間が機会を提供しさえすれば、海は計り知れないほどの再生力を発揮するでしょう」

海洋保護において、テクノロジーが重要な役割を果たしています。本稿では、ロボットの力を活用した海洋保護のソリューションを6つご紹介します。これらのソリューションの多くは、世界経済フォーラムが提供するクラウドソーシングのイノベーションプラットフォームであるアップリンク(UpLink)内の「オーシャン」コミュニティから生まれたものです。

1. 海底マッピング

ドイツのプランブルー社は、非常に詳細な海底地形図の作成に潜水ロボットを利用しています。同社が「水中衛星」と呼ぶこのロボットは、その運航にAI(人工知能)と機械学習が用いられています。

世界の海底の約80%は地形図がなく、未知の領域です。同社の高度なイメージング技術により、気候変動の影響や生物多様性の喪失、海洋汚染の実態が明らかになるでしょう。課題を明確にすることが解決策を導き出す第一歩になるのです。

2. クジラの保護

世界鯨類連盟(World Cetacean Alliance)によると、船舶との衝突によって命を落としたり負傷したりするクジラの数は毎年3万頭にものぼります。最も大型で絶滅の瀬戸際にある種にとってはきわめて深刻な話ですが、ここでもテクノロジーが事態の改善に貢献しています。

米国カリフォルニア州は、「Whale Safe(ホエールセーフ)」と呼ばれるシステムを活用しています。音を出すブイ(浮標)を通じてクジラの鳴き声を探知し、周囲を航行する船舶に減速するよう警告する仕組みであるこのシステムにより、多くの船舶が往来するロサンゼルス港周辺の航路では、クジラと船舶の衝突事故が減少しています。

一方、カナダのホエールシーカー社は、AIを利用して空撮画像や赤外線画像による海洋哺乳類の位置情報の把握を自動化しています。これにより、クジラと船舶の衝突事故を回避できるほか、広範囲にわたってクジラの活動を監視することができます。
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文=Douglas Broom, Senior Writer, Forum Agenda

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