バイオ

2023.08.25 07:00

クジラとの衝突防止など、海を守るロボット技術6選

督 あかり
2785

3. 海洋の健全性のモニタリング

オーストラリアの革新企業であるアドバンストナビゲーション社は、水深3000mの地点まで潜航できる「ハイドラス(Hydrus)」という名の水中ドローンを開発しました。強力なライトを搭載するとともに、完全な自律航行が可能なこのドローンは、新種の海洋生物を発見・特定することが可能です。

また、サンゴ礁の健康状態のモニタリングもできるほか、海洋生態系について欠けているわたしたちの知識を補ってくれます。これにより、海洋生態系を保護・保全する方法についての新たな知見を政策決定者に提供できるようになるでしょう。このような大きな可能性が、わずか7kg未満のその筐体に秘められているのです。

4. 海洋生物の探査

世界の海に生息する生物のうち、現在知られているのはわずか10%にすぎません。 Image: Unsplash/Sangga Rima Roman Selia

世界の海に生息する生物のうち、現在知られているのはわずか10%にすぎません。 Image: Unsplash/Sangga Rima Roman Selia


自然を保護するためには、まずはどこにどのような生物が生息しているのかを把握する必要があります。それは陸上でも海洋でも同じです。世界の海には220万種の生物が生息していると言われていますが、現在までに発見され命名されているのは10%にすぎません。科学者たちは現在、残りの90%の発見に乗り出しています。

オーシャンセンサス(Ocean Census)」は、10年で10万種の新種生物を発見することを目標に掲げる海洋生物発見プロジェクトです。その探査では、遠隔操作が可能な水中ロボットを活用する予定です。また、海洋生物から海中に放出されたDNAをシーケンスする技術のほか、高解像度のイメージング技術やレーザー技術も組み合わせて適用される予定です。

5. 海洋探査を支援する海中インターネット

陸上ではIoTが急速に普及しつつありますが、はたして海中でも同じことはできるのでしょうか。そのためのソリューションを提供しているのが、イタリアのWセンス社です。

同社は、特許を取得している音響技術と光学技術を活用することで、水中装置やリモートセンサーをネットワークで結び、データ共有を可能にする海中ネットワークシステムを開発。海洋探査に伴う大きな課題を解決するのに貢献しています。海洋環境の探査以外にも、水産養殖やエネルギー、安全保障、防衛の分野への応用も見込まれています。

6. DNAによる海洋健全度の調査

環境DNAの分析で活躍する自律型ロボット潜水艇 Image: MBARI

環境DNAの分析で活躍する自律型ロボット潜水艇 Image: MBARI


海には膨大な数のDNAが漂っています。それは海中に生息する生物由来のDNAで、eDNA(環境DNA)と呼ばれています。米国カリフォルニア州にあるモントレー湾水族館研究所(Monterey Bay Aquarium Research Institute, MBARI)のチームは、自律型の長距離ロボット潜水艇を利用してeDNAの採取と海洋健全度の調査を行っています。

「DNAが豊富に含まれた海水を手がかりとして、影響を受けやすい場所の生態系の変化、稀少種や絶滅危惧種の生息状況、侵略的外来種の拡大状況を把握しています。それらはすべて、海洋の健全度の理解と向上と維持に欠かせない情報なのです」と、同チームは述べています。

(この記事は、世界経済フォーラムのAgendaから転載したものです)

連載:世界が直面する課題の解決方法
過去記事はこちら>>

文=Douglas Broom, Senior Writer, Forum Agenda

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事