毎年発行するCSR報告書。大川印刷を利用し、ゼロカーボンで印刷している
さらに、石井造園がCSR活動の理念として掲げる「ついでに、無理なく、達成感のある活動」という合言葉に込められた想いについても伺ってみた。
「地域の皆さまから日常的に寄せられる課題や困りごとは多岐に渡ります。我々の活動を持続可能なものとしながらも、可能な限り多様な要望に応えていきたい。そのために、本業のついでに時間的にも金銭的にも無理がなくできること、をするようにしています。
その結果、自分たちも達成感を得られて自然とガッツポーズをしてしまうような、そんな小さな経験を積み重ねられたらいいなと思っています」
社会のため、誰かのために良いことをしようとすると、見返りを求めてはいけないのではないか、とか自分にとって利益はあるのだろうか、とかジレンマに陥ることがあるのではないだろうか。
けれども「ご利益があればいいな」とお賽銭を投げるつもりで気軽に無理なく取り組み続けることができれば、社会に良い影響を波及しながら、自分自身の人生も豊かになっていくのかもしれない。
ベストアンサーがなくてもいい。ベストクエスチョンを見極める力を磨く
このように、社員にとっても無理なくかつ自信を持って働くことができる環境づくりに取り組む石井造園。「人を育てること」の本質にも向き合っている。しかし、ChatGPTをはじめとする高度なAIの台頭によって、これまでヒトが担ってきた仕事の多くをそれらが取って代わる未来が訪れるのではないか……。
もしもそれが現実となったら、私たちにとって自己肯定感や自己効用感を保ちながら社会に居場所を見つけることは一層難しくなるように感じられる。
近隣の学校でも数多くの出張授業や講演を行なっている石井さんは、これからの社会で求められる力について、子ども達に伝えていることがあるそうだ。
学生に向けて講演を行う石井さん
「自己肯定感を高めるために誰にも負けない何かを身につけましょう、という話をよく聞きますが、『誰にも負けない何か』が占める自己肯定感は3割程度にすぎない気がします。残りの7割は『他者を承認できる自分』への気づきではないでしょうか」
「周りの人のすごいところ、素敵なところに気づいてそれを認めることができる。そんな自分に気づいた時、本質的な自己肯定感が満たされると考えています。けれども、そもそも他人を認められるだけの余裕は、自分の中に誰にも負けない武器があってこそ生まれるのだと思います」
「つまりここで重要なことは、『自分の武器』は自己肯定感の3割ほどに過ぎないのだから、大した特技でなくてもいいということです。どんな小さなことでもいいから、これなら戦えると信じられることがあれば、それを元手に他者を認めることもできる。
そして、他者を認められる自分に気づくと、一層自己肯定感が上がる。そんなふうにして自分を高められる人は、強いと思います」
自分の強みを見つけようとすると、「リーダーシップ」とか「コミュニケーション力」とか、何か立派な能力を証明しなければいけないように考えがちだ。しかし、実際に必要なのは「笑顔」とか「ガーデニング」とか、もっと身近で簡単なことなのではないだろうか。