「毒にも薬にもならないお金は、地域で活用されるべき」 石井造園の地域貢献とは

田中友梨
石井さんは、これからはベストアンサーではなくベストクエスチョンを見極める力が求められるのでは、と加える。

「これまでの学校教育では、試験や偏差値といった概念にしたがって、ベストアンサーを見つける力が評価されてきました。提示された問いに対して、いかにして正しい答えを導き出すか。それが求められるのです。

しかし、社会に出てみれば自分よりも頭の良い人はたくさんいる。検索すれば、AIがなんでも教えてくれる。最適な答えを導き出してくれる存在はそこかしこにあることに気がつきます」

「では、最適な答えを引き出すためには何が必要か。『より良い問い』です。より良い質問を投げかけるから、より良い答えが返ってくる。相手が検索エンジンであってもChatGPTであっても、これからはベストクエスチョンを投げかける力こそが、課題解決能力に直結するのではないでしょうか」
学校での出張授業の様子

わからないことを尋ねるのを恥ずかしく思うこともあるが、それでも尋ねる勇気を大切にしているという石井さん。例えベストアンサーを持っていなくても、ベストクエスチョンを導き出すことさえできれば、自分の成長を促し、人生をより豊かにできると信じているそうだ。

みどりを通じて、誰とでも幸せを“共有”できるコミュニティへ

CSR活動を通じて石井造園の目指す今後について伺うと、「企業活動を通して、幸せを共有する企業を目指す」という石井造園の経営理念を実現していきたい、と教えてくださった。

「我々の企業活動の結果、地球の裏側で誰かが泣いているような循環は作りたくない。たとえ我々や近隣の人々が幸せであっても、それが誰かの不幸の上に成り立つ幸せであってはならない。だから、幸せを『共有』することに重きを置いています」

かつては「顧客及び社会から信頼される企業を目指す」が理念であったところ、2012年から2013年に渡って経営理念を刷新。それ以降、「幸せを共有する企業を目指す」ことを掲げてきた。

「ただお庭を作ったりみどりを植えたりするのではなく、コミュニティづくりに貢献できる造園でありたいと思っています。そして、みどりを通じて地域コミュニティを豊かにしよう、という想いに共感してくださる方々とのつながりを大切に、そのコミュニティを広げていきたいです。コミュニティを広げていくことこそが、幸せを共有することに他ならないと思うからです」
地域住民にブルーベリーの苗木配布を行う石井さん。石井造園によるユニークなCSR活動のひとつです

とは言うものの、都市化の進んだ横浜には集合住宅でお庭を持たない家庭も多く、公共空間としての空き地も減っている。造園がみどりを基盤とするコミュニティづくりを働きかける余地はあるのだろうか。
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文=室井梨那

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