「毒にも薬にもならないお金は、地域で活用されるべき」 石井造園の地域貢献とは

石井造園代表取締役・石井直樹さん

毒にも薬にもならないお金がある。ただ漫然と使うのではなく、地域で有効活用できないか

翌年、2009年から毎年開催しているのが、CSR報告会。石井造園の顧客や地元住民を招いて行われる報告会は、地域に開かれた透明性ある企業活動の一つである。
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2023年6月24日に開かれた2022年度CSR報告会では、事業活動で排出するCO2のオフセットや間伐材の利活用、環境教育の推進や2000本を越えるブルーベリーの苗木配布活動など、多岐にわたるCSR活動の現状と課題の報告が行われた。
2022年度CSR報告会の様子

なかでも特にユニークな活動としてあげられるのが、「緑化基金」の取り組みだ。各作業現場の請求金額の下三桁と同額を、お客さまと石井造園それぞれから寄付金額として蓄える。そして、1年ごとに貯まった金額を石井造園をとおして地域社会へ還元する取り組みである。寄付金は、近隣の学校や地域施設、団体の緑化活動に活かしているそうだ。

この取り組みの始まりは、とある現場で発生したお客さまとのやりとりに着想を得た一人の社員のアイデアだったという。
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「24万580円で受注した工事でした。全ての作業が終わった後、お客さまから端数の金額を丸めて24万円ぴったりの請求にするのはどうか、と相談がありました。

現場を担当していた社員に確認すると、工事にかかった費用は見積もりの金額内におさまっていると言うので、それなら値引きをしても石井造園としては問題ない。お客さまの要望に応えよう。と返事をしました」

しかし、担当社員から返ってきた提案は意外なものだった。

「『お客さまも我々も譲ることができる金額ということ……。つまりこの下三桁580円は、双方にとってあってもなくても困らないお金ということです。それならば、その金額をそれぞれが出し合って地域社会のために使うようにしたらどうでしょうか』というのです。」

「これには驚きました。確かにその通りだと思ったからです。それまで便宜上キリの良い数字に調整していた施工費用の下3桁でしたが、それが実は自分たちにとってはさして重要な金額ではないから可能であった、という事実に気がついた瞬間でした」

こうして、お客さまと石井造園それぞれから580円を出し合うことで始まった緑化基金の取り組み。初年度である2008年には74の顧客とともに6万4512円が集まった。

「毎年、CSR報告会で緑化基金の寄付式を行なっています。集まった金額に応じて寄付団体と金額を選定し、直接お渡しします」

さらに、2021年度からは石井造園敷地内にある自動販売機の飲み物が1本売れるごとに5円を緑化基金の一部として寄付する取り組みも開始した。

2022年度の寄付金は、200を越える個人や企業と石井造園から集まった51万6706円と自動販売機の売り上げから2万5805円、あわせて54万2511円。2023年6月のCSR報告会にて、9つの団体の緑化活動に寄付された。
敷地内の自動販売機には、緑化基金の取り組みを知らせるポスターがある

「誰かの役に立ちたい、良いことをしたいと思って工面するお金にも大きな価値があります。しかし、毒にも薬にもならないお金があるのならば、そのお金こそただ漫然と使うのではなく、地域社会で有効活用されるべきだと考えています」
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文=室井梨那

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