その解決を目指す動きとして、2015年に国連が掲げた国際目標「SDGs(持続可能な開発目標)」の認知度は日々高まりを見せており、市民・企業・行政・教育機関など、立場に関わらず多様なセクターが持続可能な社会の実現に向けて動き出している。
そのような潮流を受け、企業活動の分野で改めて注目が集まっているのが「CSR(企業の社会的責任)」の概念だ。経済的な利益追求のみならず、環境負荷の低減や労働格差の是正、地域コミュニティへの貢献など、企業が社会に与える影響を把握し、責任ある経済活動を行うための指標である。
特にコロナ禍からの復興を目指す近年、企業の社会的責任として、社会にもたらす悪影響を削減することにとどまらず、社会をより良く成長させていくための企業活動が求められている。
では、これからの社会にとっての良い企業とは、どんな企業だろうか。
そこで今回は、横浜市内でCSR活動の先駆けとして活動する、石井造園(以下、石井造園)の2022年度CSR報告会に参加し、代表取締役・石井直樹さんを取材した。
2004年に同社の2代目として会社を継いでから、地域貢献の取り組みを軸とするCSR活動を加速させてきた石井さん。造園業ならではのユニークな社会貢献の仕組みを整えながら、地域に暮らす人々の幸せに働きかけるその背景にはどんな想いがあるのだろうか。
本記事では、石井造園が目指す地域貢献の形とそれによって生まれるコミュニティの未来を学ぶ。
地域に根ざす石井造園。CSR元年は2008年
日本国内で「CSR」という言葉が広く知られるようになった一つの契機は、1956年に経済同友会が行なったCSR決議だ。石井造園の誕生は、そのおよそ10年後である1966年3月。観葉植物や花の鉢植えを扱うお店として、横浜市と鎌倉市にまたがる大船駅前に誕生した。
石井造園
それから現在まで、個人宅や集合住宅、学校、そのほか多様な公共空間における造園業に従事してきた。その施工内容は多岐に渡り、お庭の設計や施工、管理はもちろんのこと、地面の舗装やブロック塀・フェンスの設置といった土木工事まで、様々な形で空間づくりを行っている。
「石井造園ではCSRという言葉こそ使っていなかったものの、創業当初から地域に根ざすことが企業理念でありました。長年の積み重ねを土台に、2005年には地域人材の雇用を推進しながら本業を通じて社会的事業に取り組む企業を認定する、『横浜型地域貢献企業』の構築と採択に携わりました」
横浜型地域貢献企業の制度確立に貢献すると同時に、同制度の認定企業として本格的にCSRに取り組み始めた石井造園。そして、企業の経営理念としてCSRを掲げた2008年が石井造園におけるCSR元年だ。
「最近では、サステナビリティとかSDGsとか、企業の社会活動に関わる様々な言葉が登場しています。その中でも私は、『CSR=社会的責任』という言葉が我々の活動に対して最も腹に落ちると感じています。
会社は私のものでも社員のものでもなく、社会の役に立つものとしてあるべきだという石井造園の想いがよく反映されていると思うからです」