探究すると何が手に入るのか?
ぼく自身は探究に関わる機会も多く、全国から視察が多い学校でも長く運営委員や指導員をさせてもらっていました(京都市立堀川高等学校)。この学校で毎年探究の成果発表会を聞かせてもらっているのですが、「探究すると何が身につくのか」を生徒自身が考えてまとめたものがありますので、その一部をご紹介しますね。
・まずは「やってみようとする力」。とにかくやってみる、とりあえずやってみることが大切。
・次に「わからないことに耐える力」。つまり、わからない状態にあったとしても、そこでの戸惑いや不安を乗り越えて、わかるまでやる力。
・特に大切だと感じているのは、「わからないものに対する敬意」。
わからないこと、それは最初はとても怖いかもしれないけれど、探し続けていくと、わからないことは実は面白い、ということに気づけます。わからないこと、知らないものを楽しんで、向き合えるようになるのはすばらしいことです。
探究には、「他の者の認知状態に立つ力」も重要です。
さきほどの「貧困とは何か」についてみんなで考えたように、みんなの知恵を集めると、自分では気づかなかった、自分とは違う考え方が出てきます。それが他の者の認知状態を知ることで、必ずしも共感はしなくてもよいので、他の見方があることを、みんなで楽しんでほしいと思います。
そういった「探究」を継続的にできる学校が増えたらいいな、そういう学校であれば多様な関心をもっている生徒さんが、ひとりひとり自分の好きなことを探究していくことができるんじゃないかと思いました。この草潤中学校を作るときにアドバイスさせていただいたのも、まさにそういう探究の時間をもつことが、自分の居場所を見つけるうえでも一つの力になってお役にたてるのではないかと思った次第です。
みなさんが今、学校のなかでの新しい挑戦のなかで日々が楽しめているのであればそれでいいですし、これからまた何かご自身で興味のあることができてきたら、その何かをとことん集めて、とことん続けるような日々を過ごしてもらえたらなと思っています。
最後に「とことん」に変わる言葉をslidoで集めさせてもらいましたが、「周りに止められても」「自分が納得するまで」「有名人になるまで」「もりもり」などなど、とても素敵な言葉がいっぱい集まりました。「とことん」以外にも、ご自身で決めたお気に入りの言葉でぜひ挑戦してみください。
いただいた言葉のなかでは、とくに次の2つに興味深々です。「誰かと一緒に」も素敵ですし、「休みながら少しずつ」もいいですね。そうです、無理に片意地を張らず、楽に楽しみながら、そしてそのことを待ってくれる大人が皆さんの周りにもたくさんいるんだぞ、ということをぜひ覚えておいてください。
本日はありがとうございました。
続編:いつまで待てばよいのか-不登校特例校で見守る大人に京大准教授が話したこと
塩瀬隆之◎京都大学工学部精密工学科卒業、同大学院工学研究科修了。2014年7月京都大学総合博物館准教授。2018年より経済産業省産業構造審議会イノベーション小委員会委員および若手WG座長、特許庁知財創造教育調査委員、文化庁伝統工芸用具・原材料調査委員、日本医療研究開発機構プログラムオフィサー、2025年大阪・関西万博政府日本館有識者など。2017年度文部科学大臣表彰・科学技術賞(理解増進部門)ほか、受賞多数。