「勉強」と「探究」の違いって? 塩瀬先生が教える「探究」のコツとは
今日の授業は、「Slido」というツールを使って、みなさんの意見を聞きながら進めたいと思います。対面でこの部屋にいる生徒さんも、オンラインでタブレットの向こう側にいらっしゃる生徒さんも、これなら同じように思ったことを講師に伝えることができます。僕が皆さんに質問をしたら、スマホかタブレットで皆さんのお考えを入力してみてください。まず最初に、勉強と探究の違いについて、みなさんはどのくらい知っていますか? 選択肢から選んでみてください。
──みなさん、入力が早いですね。集計がもう出ました。
「探究と勉強がどう違うか、なんとなく説明できると思う」が59パーセントでした。
全国の高校の先生に聞いても、多分そのくらいだと思います。
今日は、まったく知らない人を減らし、「なんとなく説明できる」人で十分なので、もっと増やせたらいいと考えて講演します。
勉強と探究の違いを簡潔に説明せよと尋ねられたら、僕はこう言うことにしています。
「勉強」は、わからないハテナをわかるようにする。すなわち、わからないことをなくすこと。
「探究」は、わからないハテナがあったら、他にもハテナが連鎖するように増えていくこと。
この違いを感じるためにも探究のごくごく簡単なコツを二つだけお伝えするとしたら、「とことん集める」ことと、「とことん続けること」だと思っています。この二つだけで、とことんやってみるとハテナが連鎖していくことを体験いただきたいのです。
貧困ってなんだろう? で「とことん集める」
今からこの「Slido」を使って、「とことん集める」をみなさんと一緒にやりたいと思います。みなさん、「SDGs」という言葉を知っていますよね。その中の1つ、「貧困をなくそう」というテーマから、「貧困とは〇〇だ」を、みんなで集めたいと思います。
4年前、ムハマド・ユヌス※さんという、ノーベル平和賞を受賞された、世界でもっとも貧困問題に詳しい方が京都に来てくださった時に、高校生と語り合う場が欲しいということで次のようなワークショップを作らせていただきました。
※バングラデシュの経済学者。貧困層を対象にした低利・無担保融資を行うグラミン銀行を創設したことで知られる。
せっかくノーベル賞受賞者と対話できる高校生たちに、たったの1カ月間で超絶バージョンアップ、パワーアップしてもらおうと思い、「30日チャレンジ」というのをやりました。毎日5分間、「貧困とは何か」を考え続けてもらったんです。毎朝LINEに「貧困とは〇〇」と書くことを30日間、続けてみんなの考え方を集めてもらったんです。
「貧困とは何か?」をどんどん説明してもらって出てきたのは、例えば、次のようなものでした。
・「貧困とは偏見である」。誰かが貧しいと勝手に決めるから貧困が生まれてしまう。
・「貧困は比較するから生まれる」。誰かと比べるから貧困って生まれるんじゃないのか。
・「貧困とは無限ループである」。貧困って、どこかをなくそうと思うと、こっち側が代わりに貧困になるので、いつまでもなくならないんじゃないか?
16人の高校生が30日書いた約500個の回答を集めて並べて、その中から選りすぐりの問いをユヌス博士にぶつけようと。
こんなふうに、とことん考えるだけで自然と問いがいっぱい出てくるので、それをみなさんにも疑似的に体験していただこうと思います。