教育

2023.08.22 10:00

「ありのままの君を待ってくれる」不登校特例中で京大准教授が生徒たちに話したこと

石井節子
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ではここで、「貧困ってなんだろう?」を、みなさんもslidoに書きこんでみましょう。

世の中で答えが出ないことには「見方の違い」が原因なこともある

──みなさんが書いてくださったものには不正解はなくて、全部確かにそのとおり。

「貧困とは考え方の違いである」「貧困とは無くならないものである」「貧困とは繋がりがないこと」「貧困とは悲しい」「貧困とは余裕がないことである」「貧困とは食べものがないこと」

世の中で答えが出ないことの中には、他者の「見方の違い」をお互いに認められないから生まれるものもあるんです。

今ここに書き込んでくれた30~40人ぐらいが、1人2~3個ずつ書いてくれると、100個ぐらいの見方が集まります。これを繰り返して500個くらい集まれば、おぼろげに「貧困」を説明する言葉を手に入れられる。それは1人ではなかなか手に入らない、みんなで対話をしながら力をあわせることが必要です。

実際のワークショップの日、何十年間も貧困問題に取り組んできたユヌスさんご自身は、「貧困とは、機会が否定されることである」と即答してくださいました。
たとえばバングラデシュのとある村では、小学生や中学生ぐらいの子供が、何キロも離れた先まで、往復2時間もかけて水汲みに行かないといけないような子もいます。一日何往復かするだけで、学校に行く時間がそもそもない。親も人手を取られると困るので、学校に行かせるなんてとんでもない。そうなるとバングラデシュの子どもたちの中には、そもそも学校で勉強するチャンスも時間もないし、今の生活をどう改善しようという考えにも及ばない、やりたくてもできない。

そういう環境が、この「機会の否定」のひとつと言えるかもしれません。

それに比べると、自分のペースで、何度でも、自分にとっての「チャレンジ」が可能な場所って、それだけで恵まれているのだと思います。そういうチャンスが自分たちの周りにはたくさんあって、周囲の大人も応援してくれているので、それを自分のペースでじっくり見つけていってほしいと思います。

自由研究を探究に進化させる

みなさんは、今までに「自由研究」をする機会があったかも知れません。これが高校に入ると「探究」という一段進化させたものに変わる必要があります。

自由研究と探究がどう違うのか。そのときにも、「とことん集めること」がとても重要になります。

いろいろな学校の先生に、どんな探究を評価したいのか、尋ねてみたときに名前があがった中学生と小学生の「探究」をご紹介します。

1つ目は、妹が蚊に刺されるのが気になり、蚊の研究を徹底的にした、田上さんという当時中学生だった方。

田上さんは蚊を4000匹捕まえて、家の中で飼っていたそうです。これを許したお母さんがすごいですね(笑)。

彼はその4000匹の蚊たちが「どんな匂いにつられて集まってくるのか」、「それを生み出している菌の組み合わせがどんなものか」を徹底的に調べたんです。そして、もっと探究を深めるには日本では足りないというところまで調べ尽くしてしまったので、いまはアメリカのコロンビア大学に在籍しています(生徒たち、ざわめく)。このことはコロナ禍に日本に帰国された際にインタビューの機会を得て伺いました。
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監修=塩瀬隆之 構成=石井節子

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