沖:企業は環境にいいものやサービスを提供しようとしても、価格が高くなって消費者が買ってくれるのか不安で二の足を踏んでいます。緩和費用の高さがハードルになっている。だから、最初のドンという投資をして下げたものの勝ちになるはずです。ただ、一企業やひとつの国だけでは無理でしょうから、全世界的なカルテルを組んででも、とにかくやるしかない。
三宅:企業は、少し前まで気候変動対策をコストとして位置付けていて、義務付けられた指標開示にどう対応するか、といった議論が多かった。しかし、この1~2年で、同じやるなら「どうやって稼ぐか」というマインドセットに変わってきました。「企業成長につなげなきゃ損だ」と。
ポジティブに、「じゃあどこに投資しよう」「何に投資するのがいいんだろうか」という議論が進んでいます。振り返ると、コロナやウクライナ戦争でサプライチェーンが影響を受け、さらに石油価格の高騰があって、やらざるを得なくなったのかもしれない。
関山:2020年ぐらいがターニングポイントだったのではないかと思います。ちょうど20年にパリ協定の運用が始まり、明けて21年の1月にバイデン大統領の就任でアメリカの外交安全保障政策がガラリと変わって、気候変動を柱に据えることとなった。TCFDの提言を受けてIFRS(国際会計基準)の気候変動リスク開示に向けたルール作りが始まったのも2021年です。一連の動きのなかで日本企業も、「外堀が埋まってきた」という雰囲気が出てきたのではないでしょうか。
沖:コロナ禍がひと段落して、グローバルリスクの順位が変わりました。また、EUでは、温暖化対策、あるいは人権問題に配慮してないモノやサービスの市場からの締め出しに加えて、長期的にものを見る経済になりました。低成長時代に長期的にものを見るようになり、会社の短期的なリターンではなくて、10年後、50年後、100年後を考えたときに、気候変動対策の優先順位が上がります。経営のビジョンも長期的になっています。
もうひとつの視点として、再生可能エネルギーを導入すると、エネルギー価格は上がる。これをみんなが払えるように経済発展することが非常に大事です。雇用の確保も欠かせない。経済が伸びないと、環境対策、温暖化対策は絶対に無理です。支払い能力が例えば3割4割上がれば、電気代が上がってもガソリン代が上がっても払えますよね。