アシナシイモリは足がない穴居性の両生類で、主に土の中や川底に隠れて暮らし、大型のミミズやヘビに似ている。東南アジア、インド、バングラディッシュ、ネパール、スリランカ、並びに一部の西アフリカ、中米および南米北部の高湿度熱帯地域に生息している。現代のアシナシイモリは、両生類の中では極めて稀な性質を数多く持っている特異な動物だが、そのリストに新たな特徴を追加できそうだ。アシナシイモリはヘビの毒に耐性がある。
「私たちの研究は、1つの捕食圧が進化のカスケードを引き起こし、同じ反撃方法が異なる種の系統でも独立して出現するという教科書的な例を示しています」と論文の上席著者で、クイーンズランド大学環境学部准教授の毒物研究者ブライアン・フライはいう。
種が敵に遅れを取らないために新たな進化を起こさざる得ないという見解を、科学者は「赤の女王仮説」と呼ぶことがある。ルイス・キャロル作の童話『鏡の国のアリス』で、赤の女王がアリスに鏡の国の特徴を「その場にとどまるためには、全力で走り続けなければならない」と説明した方法と似ているためだ。
古代のアシナシイモリは、新たに進化したコブラ科のヘビによく狙われていたと思われる。どんな捕食者・被食者の関係においても、捕食に対して最も脆弱な動物は、何らかの防御能力を得るように進化する選択圧(淘汰圧)を最も強く受け、進化しなければ絶滅する。この関係は「赤の女王仮説」が捕食者と被食者の間の軍拡競争にどのような影響を与えるかを研究するためのモデルを科学者に提供している。
「この場合、重要な捕食圧はコブラ、サンゴヘビなどのコブラ科ヘビの増加でした。それは中空の固定された注射器のような牙を通じて毒を送り込む新たな方法への進化によって特徴づけられます」
アシナシイモリはイモムシのように動きが比較的遅いため、空腹のコブラたちにとって格好の餌食だった。
「起きていたであろう大虐殺で、コブラがアシナシイモリを常食にするまでになり、アフリカ、アジア、アメリカ大陸におけるコブラ科ヘビの急速な広がりの原因となりました」