リーダーシップ

2023.08.10 12:00

世界56位と57位のパワフルウーマンから、妹たちへ。東京都知事と日銀理事が初対談

Forbes JAPAN編集部
清水:小池知事は、キャリアを積むなかでどのようなことを心がけていらっしゃいましたか?

小池:私は環境大臣や国家安全保障担当総理補佐官、防衛大臣などの役職を経験してきましたが、チャンスをいただいたからには、自分でなければできないことをやろう、と常に考えていました。

「クールビズ」もそのひとつです。環境大臣時代、地球温暖化対策に取り組みましたが、CO2やGHG(温室効果ガス)の問題は、専門用語を使って解説したところで興味をもってもらえないんですよね。そこで、生活に密着したかたちで浸透させたいと考えて、クールビズを打ち出したのです。

清水:思い返せば、かつて男性は真夏でも背広にネクタイを締め、汗をダラダラ流して……だったのが、クールビズが広まり、夏はビジネスシーンにおいても軽装が当たり前になりましたね。

小池:その結果、適正な室温で快適に過ごせるようになり、GHGの排出削減につながっています。

従来の常識にとらわれない発想を打ち出し、しなやかに、それでいて明確に結果を残していきたいという思いは強いですね。「女性だからできない」と言われるのは悔しいですから。

清水:同感です。私も自分にしかできないことを大切にしてきました。私の場合は、理系の出身であることが大きな強みになっています。

日本には、「女性は数字に弱い」という根拠のない思い込みのようなものがありますよね。働くなかでも、実際にそういった空気感を感じることはありました。そういうときに「私、工学部の出身なんで」と言うと、男性陣は「え、そうなんだ……」と意外そうな表情で後ずさりする(笑)。

理系の知識でなくても、何でもいい。「これは私に任せてください!」と言えるような強みがあると、そこから少しずつ信頼を得ていけるのではないかと思います。

小池:行動によって示すことを大切にしていらっしゃるんですね。

清水:はい。大義を掲げて相手を打ち負かそうと策をめぐらせても、実際にはうまくいかないですから。「マンツーマン・ディフェンス」といいましょうか、一人ひとりの懐に入り込んでいくことで、「女性だから〇〇であるはず」という思い込みを変えていくことができるんじゃないかと思うんですよ。

私は日本銀行で30年働くなかで、延べ何千人もの職員とともに仕事をしてきました。その一人ひとりに、きっと私と働く前よりは「女性に仕事を任せてもいいな」と感じてもらえるようになったのではないかと自負しています。
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文=音部美穂 写真=小田駿一

この記事は 「Forbes JAPAN 2023年8月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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