この防御力の差は、ウクライナが南部で6週間前に始めた反転攻勢で、両国の車両損失数が同程度となっている理由を部分的に説明できる。ある非公式集計によると、戦車やIFV、榴弾(りゅうだん)砲、トラックの損失数は、ウクライナ側が196両、ロシア側が184両だ。
歴史的にみて、守勢に回る軍は通常、攻勢に回る軍よりも有利にある。攻撃側は安全地帯から出て無防備な地域を進軍しなければいけない一方、防衛側は守りに徹することができるためだ。軍事作戦の鉄則として、攻勢が成功するためには、防御側の3倍の戦力を持つべきであり、たとえ勝利しても相手側の3倍の損失を覚悟すべきだとされる。
だが、ウクライナ戦争はその鉄則に抗ってきた。ウクライナ軍は、兵士・車両面で若干の優位性しか持っていないにもかかわらず、複数の主要戦線で着実に進軍。自国軍の損失を抑えると同時に、ロシア側に同程度の損害を与えている。
米軍制服組トップのマーク・ミリー統合参謀本部議長は18日、「この攻勢は速度が遅く困難なものとなり、大きな犠牲が生じるだろう」と指摘した。だがウクライナ側は、より防御力の高い部隊の多くを温存し、ロシア側の防御力が低い部隊を消耗させることで、将来の進軍の下地作りをしている。
ミリーは「ウクライナ部隊が地雷密集地域と障害を突き抜ける間、ウクライナの強力な予備部隊は、同国が選ぶ最適な時と場所で出陣すべく待機している」と説明した。この予備部隊には、ドイツが供与したマルダーがすべてと、米国が供与したM2の半分が含まれている可能性がある。これが前線に投入されれば、装甲の薄いBMP-1しか持たないロシアの守りを崩せるかもしれない。
(forbes.com 原文)