長期的繁栄をつくりだす「理と利の統合」
7000名以上の中小企業経営者の教育に従事してきた青木代表が重視するのは「理と利の統合」。渋沢栄一翁が「論語と算盤」と表したように、道と経済を融合させること。理念と、利益が合致することを企業は追求しなくてはならない。谷本:従業員200名の規模で、青木社長はどのように理と利の統合を実践してこられましたか?
青木:本日、私はジャケットに三角形が2つ重なり合う図の入ったピンバッジを身につけていますが、この図は、企業の発展と働く社員一人ひとりの自己実現を重ね合わせ、繁栄し続ける企業となることを表しています。三角形は、下から理念・ビジョン・目標・計画・日々の実践の5段階になっています。理念を概念で終わらせるのではなく、日々の実践で完結する、経済を無視した精神論で帰結してはいけないのです。
弊社では、理と利の統合を実現し、社員とともに繁栄するための1つの仕組みとして、税引後利益を「3・3・3・1」で還元しています。3割は内部留保、3割は配当、3割は社員へ、そして1割は社会への還元。昨期は売上50億円、経常利益15億円の組織体となりましたが、この繁栄のループをこれからも回し続けていきます。
谷本:企業理念というと、昨今どの企業も「人に優しく、環境に配慮して」と掲げています。でも、そこにオリジナリティが見えてこないのが、メディア側としての気付きでもあります。この部分について、どう思われていらっしゃいますか?
青木:私は創業当時から「利益は目的ではなく結果である」と信じて貫いてきました。一方で、道を追求した結果の繁栄を目指すのではなく、理念経営やSDGsを「手法」として使っている実態も、企業のなかにはあるように見受けます。だからきれいごとに聞こえてしまうのです。
理念とは、ある物事の本来こうあるべきであるという拠り所となる価値観のことです。本当にその企業の存在意義や価値に立ち返ったとしたら、耳障りのよい聞きなれた言葉ばかりにはならないのではないでしょうか。何のために、誰のために、なぜ存在するのか、なぜ自分たちでなければならないのか。2022年に「経営者は人生理念づくりからはじめなさい」という書籍を出版しましたが、企業理念をお題目にしないためには、経営者自身が自分自身と対話し、経営者としてのミッションに立ち返る必要があると思います。