縦に強い組織に横串を通してDXを進める、KDDIの仕組みづくりとこだわり

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DX(デジタルトランスフォーメーション)の重要性はいまや多くの企業で認識され、DXの実現に向けた業務のデジタル化が急がれるなか、それを阻害する要因となっているのが、企業におけるITベンダーへの過度な依存である。ドリーム・アーツの調査によると「ITベンダーに頼っている」と回答した企業は6割を超えていることが明らかになっている。また「すべてお任せで仕事が進められるので楽だ」という回答は7割近く(65%)であった。つまり、丸投げの状態である。

本来、ユーザーである企業とITベンダーは、デジタル技術による新たな価値創造を目指し、協創する関係にあるパートナーであるべきだが、実態としてはデジタル技術に疎いユーザー企業がすべてITベンダーに任せるしかない構図が固定化されてしまっている。

これではDXどころではない。
Q:ITベンダーと付き合う上で得したことはあるか

ITベンダーと付き合う上で得したことはあるかに対する質問と回答

情報システム部門の苦悩

事実、デジタル技術は高度化する一方、情報システム技術者は慢性的に不足しており、多くの企業で情報システム部門の人数、スキルでは現場の要求に応えるのは難しくなってきている。日々の運用で精一杯という企業も多い。

加えて、あらゆる業務においてSaaSを活用することが当たり前となった現在では、情報システム部門にできることは少ない。現場のニーズとのギャップがある場合、SaaSベンダーに要望として伝えることはできても、情報システム部門が自力で対応できることは限られている。

情報システム部門のあり方そのものが問われている状況である。

「デジタルの民主化」による全社員デジタル人材化

この状況を変えるきっかけとなりうるのが「デジタルの民主化」だ。

いまやあらゆるニーズに合致するSaaSがあるだけでなく、ノーコード開発ツールによりユーザー自らが自分たちの業務をデジタル化することが可能になっている。

ノーコード開発ツールがあればプログラミングは不要で、画面上の操作のみで人事関連の各種申請や稟議承認手続き、プロジェクト管理、問い合わせ対応など、現場で必要な各種アプリケーションを作成できる。

つまり、デジタル技術は情報システムの専門技術者だけのものではなくなり、すべての人がデジタル技術のパワーを活用できるようになったのだ。これが「デジタルの民主化」だ。

デジタルの民主化によって全社員をデジタル人材にすることができる。業務のことを最もよく知っているのは業務部門の人材だ。業務部門が自らの業務を効率化するというだけでなく、デジタル技術によって何ができるのかを実体験することで、DXの本質を理解することにつながる。
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編集=安井克至

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