経営・戦略

2023.08.03 13:30

縦に強い組織に横串を通してDXを進める、KDDIの仕組みづくりとこだわり

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会社全体のDXスキル向上、横連携を実現する仕組みづくり

デジタルの民主化への取り組みを、グループ全体の変革の中核として推進しているのがKDDIだ。KDDIは社員一人ひとりを財産であると捉えている。そんなKDDIでは事業の成長・拡大を支える人材をいかにコア事業に注力させるのかを目的として、グループ各社で個別に持っていたコーポレートオペレーション業務をシェアードサービスセンター(SSC)として集約した。SSCの設立によってコーポレートコストを7年で20%効率化することを目指すのと同時に、システム・規定・制度設計をグループ全体で共通化しコーポレートガバナンスの強化も狙っている。
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特筆すべき取り組みは、情報システム部門とは別にSSCに専門のIT部隊を持っていることだ。

「KDDIは縦のマネジメントラインに沿って決められたことを推進することは強い。しかし、縦のラインだけでは部分最適になる。横串を刺さねばならない。SSCはグループ各社を支えるために本体がフルクラウドでサービスを提供する。そのためにSSCはITで変革する部隊でなければならない」とKDDIコーポレート統括本部コーポレートシェアード本部長兼人事本部副本部長である西田圭一氏は語る。

KDDIでは、グループ全体の人事申請、人事評価業務、ID管理業務、稟議申請業務などグループ全体の横串となるコーポレートオペレーション業務をノーコード開発ツールであるドリーム・アーツの「SmartDB(スマートデービー)」で構築している。
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実際に開発にあたるのは、最も業務のことをよく知っているSSCのスタッフだ。まずはコーポレート全体の人事系の業務のデジタル化から着手し、業務をアプリケーションにするスキルを身につけることから開始した。ITベンダーであるドリーム・アーツは構築を請け負う立場ではなく、市民開発(業務のプロである業務部門の社員が、ノーコードツールなどを活用し自らの業務にデジタルを活用すること)を実現するための伴走者として使い方をサポートしたり、設計のアドバイスを行う立場として関わった。

製品を選択するポイントとしてKDDIがこだわったのが、プロダクトオーナーと直接のコミュニケーションが取れるサービスであるかどうかだ。外資系ITベンダーの製品も候補に上がったというが、開発チームとのコミュニケーションが本国へのエスカレーションとなる製品では、コミュニケーションの質とスピードにおいて、KDDI自らが変革のために業務をデジタル化するという目的に合致することはなかった。ITベンダー依存に陥ることなくKDDIと協創できる関係を構築できるかどうかという観点でドリーム・アーツのSmartDBを選択したという。

今では、決してIT技術の専門家というわけではないSSCのスタッフ一人ひとりがSmartDBでアプリを作成するスキルを身につけ、DX変革人材となっている。

西田氏はコーポレートシェアード本部長であると同時に、人事本部の副本部長である。KDDIが掲げる「人財ファースト企業」への取り組みの柱であるジョブ型人事制度の導入や全社員のDXスキル向上とプロ人材の育成について責任を持つ立場である。SSCにおけるデジタルの民主化の取り組みが、単にコア業務への集中、バックオフィスの効率化というだけでなく、KDDIにおけるDXスキルの向上、横連携ができる仕組みの構築を企図していることはいうまでもない。

KDDIの事例は、DXを実現する人材をどのように育成するのか、興味深いアプローチである。

連載:成功事例から探る
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編集=安井克至

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