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2023.06.27 10:30

「デジタルの民主化」で業務部門の社員自らDXの土台を固めるヨネックス

安井克至

ヨネックスでは50名もの社員が自分達で業務をデジタル化できるようになったという

日本企業のデジタル化の遅れ、それによる国際競争力の低下が指摘されている。IMD(国際経営開発研究所)が発表した2022年のデジタル競争力ランキングでは調査対象63カ国中、日本は29位だった。2018年の22位から毎年順位を落としている状況だ。

特に「Agility of companies」つまり「企業活動の迅速性」という指標では63カ国で最下位となっている。今日の企業をとりまく競争環境の変化は激しく、「VUCA」という言葉をいたるところで耳にするようになったにも関わらず、日本企業の意思決定のスピードは遅いままだ。

ここでは、なぜ日本企業のデジタル化が進まないのか、デジタルパワーを業務に活かし、組織の力を引き出すにはどうしたらいいのかについて、現場を分析し、成功事例からそのノウハウを学びポイントを整理した上で3回にわたり紹介していく。

DXが進まない理由

ドリーム・アーツが発表した調査によると「今後、DX(デジタルトランスフォーメンション)に関わりたいか」というアンケートに対して、できれば関わりたくないという消極的な姿勢をとる人の割合が60%という結果が出ている。調査結果からは、デジタルという上司や経営層にとって不慣れな領域で明確な意向が示されない中で現場には結果のみが求められ「大変そう」という冷ややかな目が向けられていることが浮き彫りになっている。

ソフトウェアやデータには質量がない。クラウド全盛の現在、大規模なハードウェアへの投資も不要になっているため、試してみて使った分だけのコストを負担するだけでさまざまなサービスを利用できる。つまり、やってみて失敗したとしても大きな負債を負うことはなく、むしろデジタル技術の活用の経験値という資産を得ることができるのだ。

しかしながら日本では、組織内の秩序や調整を重視し、あらゆる部門に根回しをし、失敗がないように時間をかけて進める作法が染み付いている。大規模な工場を建て大量生産をする時代の常識のままバージョンアップされておらず、デジタル技術の特性である「失敗にコストがかからない」という考え方に慣れていないことが根本原因にある。

企業は、デジタル技術の特性を理解し、小さなトライアルをすばやく繰り返す中でヒューリスティック的に変革を進めていくやり方を学ぶことで、真にDXに取り組むことができるようになる。
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編集=安井克至

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