しかしながら、単にツールを導入すればこれが実現できるというわけではない。デジタルの民主化を実現するためには相応の取り組みが必要だ。
ヨネックスにおける「デジタルの民主化」
ヨネックスでは、あらゆる部門に存在する120以上の業務を、各事業部門にいる50名以上のスタッフがSmartDBを使いデジタル化しているという。そのデジタルの民主化の秘訣について同社社長室の政埜ゆりか氏に聞いた。政埜氏はシステムエンジニア、海外航空会社の客室乗務員、特許事務所の会長秘書という異色の経歴の持ち主だ。社長室において秘書としての業務のかたわら、社長室に集まるあらゆる決裁業務をデジタル化し、紙業務を大幅に減らすことに貢献している。デジタル化のきっかけとなったのは経営基盤のグローバル化にともなう基幹システムの刷新プロジェクトだ。基幹システムが変わることで周辺のあらゆるシステムや、紙のまま残されていた業務が課題となった。
そこで推進したのがノーコードプラットフォームであるSmartDBによるデジタルの民主化だ。
ヨネックスではデジタルの民主化を推進するための体制づくりに取り組んでいるという。まずデジタル化に取り組む前提に対して関係者共通の目標設定がなされた上で、基本は最も業務のことに精通した現場に任せるという方針が決められた。
現場部門が忙しい業務の中でデジタル化を進めていくために、情報システム部門はユーザー管理などプラットフォーム全体の管理統制と現場部門へのサポートを実施し、定期的な講習会や相談会の開催、活用事例の共有といった事務局的な役割に注力しているという。
目の前の業務を改善したい現場部門と情報システム部門の協力関係が実現し、現在では50名もの社員が自分達自身で業務をデジタル化できるようになった。小さな成功の積み重ねによって、業務のデジタル化は全社・全従業員に浸透し、変革を担うデジタル人材が次々に育つ循環ができているのだ。
ヨネックスの事例は、真のDXを実現するためのデジタルの民主化を成功させる手段として学ぶべきところが多い。
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