「デジタルの民主化」で変革を導く
これまでは、DXを進めるためには、情報システムを構築する特別なスキルを持つ専門技術者が必要で、情報システム部門のメンバーやITベンダーに依頼しないと実現できなかった。その上、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)の調査などを見ても情報システム技術者は慢性的に不足しており、多くの企業では現場のニーズに合わせた情報システムの開発は人材、コストの両面からとても叶わない状況であった。この状況を変えつつあるのが、あらゆる業務を充足するようになってきているSaaSとノーコードツールだ。
ノーコードツールとはプログラミングが不要で特別なスキルがない社員であっても、画面上の操作のみで入力フォームや検索フォームを定義し、業務で使うアプリケーションを作成できるプラットフォームだ。人事関連の各種申請や交付、稟議申請と承認、顧客からの問い合わせの対応、プロジェクト予算管理など、企業の現場で発生するあらゆる業務をデジタル化したアプリケーションにすることができる。
こうしたツールを活用することで、情報システムの専門技術者だけでなく、業務部門のメンバーであっても、自らの業務を自分たち自身でデジタル化していくことが可能となる。デジタル技術は専門家だけのものではなく、すべての人が活用できるようになったことを「デジタルの民主化」という。
あらゆる部門、階層で大きな流れが生まれる
先にも触れたように、日本企業でデジタル技術の活用が進まない原因として、デジタル技術の本質に対する理解不足、小さく始めてヒューリスティック的に成長させていく手法への親しみのなさがあげられるが、デジタルの民主化はこれを解決する手段となる。デジタルの民主化によりノーコードツールなどを業務部門で活用するようになると、社員1人ひとりがデジタル技術によって自分たちの業務の負荷がどれだけ軽くなったのかを体感することができるようになり、データという目に見えないものの本質を本当に理解できるようになるはずだ。
またノーコードツールを使い自分たちで業務のデジタル化を実現したという経験は、デジタル化を進める際にとても効果的に働く。コンピュータプログラミングを体験したことがある方なら理解してもらえるだろうが、自分で書いたコードがその通りに動き何かしら結果を出力したときは誰でも感動する。これはノーコードツールにおいても同様だ。自分が組み立てた画面がきちんとアプリとして動き、それをチームのみんなが使うという経験は自信と達成感につながる。