藤吉:歴史と文化だけではなく、何気ないところに地元のアセットが輝く。規模は小さくてもバリューは大きく、ストーリーが紡がれる。新たな移住者たちが与えてくれる示唆にはスモール・ジャイアンツに通ずるものを感じます。
シリコンバレーに打って出る「世界が憧れるまち」へのロードマップ
藤吉:さて、城下町や宿場町が培ってきたレガシーといえば伝統工芸ですね。漆器や寄木細工、組木細工、先ほど市長が見せてくれた木象嵌細工も精巧極まりない。匠の技は今も伝承され、現代に合わせてアップデートされているのでしょうか。守屋:小田原・箱根エリアで木工の旗手として知られたのが金指勝悦さんです。箱根駅伝のトロフィーを長年作り続け、進化した寄木細工を世に知らしめました。2022年に惜しくも世を去られましたが、その工房では各地から集まった弟子が技術を継承していますよ。
私たちは「世界が憧れるまち」をキャッチフレーズに掲げ、デジタルミュージアムなどで世界に情報を発信してきました。世界と言えば、小田原の工芸もミラノ万博(2015年)に出品し、欧州の方々への手応えを感じたことがありました。今度は自分たちが世界に出ていこう。2023年秋にはシリコンバレーでのポップアップストア出展を準備しているところです。
藤吉:小田原市がシリコンバレーに打って出るという構図は面白いですよ。でも、なぜ欧州の主要都市ではなく、テクノロジーが集積するシリコンバレーなのでしょう?
守屋:事業の広がりを考えればアジア、ASEANから一歩を踏み出すのがいいという考えもあります。ただ、私たちはいろんな人種、民族の方に小田原の逸品を届けたい。
そこではアメリカ、シリコンバレーがうってつけです。そして、若い職人には肌感覚で世界を知ってほしい。自分たちの作品がどれだけの価値を持っているのか、海外で受けるためには何が必要か。先端のシリコンバレーで、思う存分体感してきてもらいたい。