国内

2023.06.27 07:30

「1000年資産」でシリコンバレーへ打って出る。小田原の挑戦

守屋:そう、地元民も藤吉さんのように答えがちなんですよ。ところが、移住者たちがフォーカスするのはアジフライだったりします。「B級グルメがこんなに充実しているなんて」とね。確かに、地元民同士がひいきのアジフライを話すと、実に多彩。サクサクした衣の揚げ加減や、ふっくら仕上げた肉厚の身、別添えにタルタルソースを出すお店もある。足元には何と豊かな世界があったのか、と気づかされます。

藤吉:歴史と文化だけではなく、何気ないところに地元のアセットが輝く。規模は小さくてもバリューは大きく、ストーリーが紡がれる。新たな移住者たちが与えてくれる示唆にはスモール・ジャイアンツに通ずるものを感じます。

シリコンバレーに打って出る「世界が憧れるまち」へのロードマップ

藤吉:さて、城下町や宿場町が培ってきたレガシーといえば伝統工芸ですね。漆器や寄木細工、組木細工、先ほど市長が見せてくれた木象嵌細工も精巧極まりない。匠の技は今も伝承され、現代に合わせてアップデートされているのでしょうか。

守屋:小田原・箱根エリアで木工の旗手として知られたのが金指勝悦さんです。箱根駅伝のトロフィーを長年作り続け、進化した寄木細工を世に知らしめました。2022年に惜しくも世を去られましたが、その工房では各地から集まった弟子が技術を継承していますよ。

私たちは「世界が憧れるまち」をキャッチフレーズに掲げ、デジタルミュージアムなどで世界に情報を発信してきました。世界と言えば、小田原の工芸もミラノ万博(2015年)に出品し、欧州の方々への手応えを感じたことがありました。今度は自分たちが世界に出ていこう。2023年秋にはシリコンバレーでのポップアップストア出展を準備しているところです。



藤吉:
小田原市がシリコンバレーに打って出るという構図は面白いですよ。でも、なぜ欧州の主要都市ではなく、テクノロジーが集積するシリコンバレーなのでしょう?

守屋:事業の広がりを考えればアジア、ASEANから一歩を踏み出すのがいいという考えもあります。ただ、私たちはいろんな人種、民族の方に小田原の逸品を届けたい。

そこではアメリカ、シリコンバレーがうってつけです。そして、若い職人には肌感覚で世界を知ってほしい。自分たちの作品がどれだけの価値を持っているのか、海外で受けるためには何が必要か。先端のシリコンバレーで、思う存分体感してきてもらいたい。
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文=佐々木正孝 写真=近藤誠

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