守屋:元勲たちが別荘地として愛したのは、恵まれた自然環境があったためです。一年を通して温暖で、東京よりも夏は涼しく、冬は暖かい。そして、交通の要衝であること。藤吉編集長も今日は新幹線でいらっしゃったと思いますが、品川駅からは最短26分という好アクセスです。
鉄道だけでもJR東海道新幹線、JR東海道本線や小田急小田原線など5社6路線が乗り入れており、市内には18もの駅があります。名古屋や京都、大阪といった西への接続も至便です。
かくして、「よそ者」たちが新しい情報やビジネスを持ってやってくる。彼ら彼女らは、新たな視点を与えてくれることも見逃せません。私たち地元の人間では気づかないまちのストロングポイントを気づかせてくれる。外部からの視点、アイデアを加えることで、小田原というまちが新たな魅力をまとって立ち上がっていくのです。
コロナ禍に移住者増「エンタメのないまち」に、バズる資産あり
藤吉:小田原市は2020年6月からほぼ毎月転入超過で、いわゆる社会増となっています。移住の促進や外部人材の活用は全国の自治体が抱えるテーマですが、小田原で移住者が増加していることは郊外移住への好例になります。コロナ禍でリモートワークが浸透し、IT企業だけではなく「国内であれば居住地は自由」とする企業も目立っています。そうなれば、都心などに好アクセスで環境の良い小田原が注目を集めるのも当然のことでしょう。そこで、移住者ら「よそ者」はどのように新しい視点、気づきを与えてくれたのですか?
守屋:第6次小田原市総合計画を作るにあたって、私たちは市民の声を広く聞くべく、アンケートを取りました。そこで市民がマイナス要素として挙げたのが「小田原にはエンタメがない」というもの。若い世代で顕著だったのですが、これには黙らざるを得なかった。東京ディズニーランドもユニバーサル・スタジオ・ジャパンも、大観衆が集まれるスタジアムもない。
そこに、「小田原ならではのエンターテインメントがありますよ」と示してくれたのが移住者たちでした。藤吉さんは「海へと続くトンネル」をご存じですか?
このスポットが「まるで天然の額縁で切り取ったかのよう」と、SNSでバズったんですよ。
藤吉:鮮やかですね。インスタ映えするのも分かります。暗いトンネルを歩くと、相模湾がいきなり眼前に広がる。市では何かキャッチフレーズをつけているんですか?
守屋:市の観光課にもよく問い合わせがあるのですが、ただの「防潮扉」でしかありません。一つのまちに長く住んでいると、魅力にはどうしても気づきにくいものなんです。食のジャンルも、そうです。相模湾は海産物の宝庫。日本にいる魚種の4割、約1600種の魚が見られると言います。そんな海の幸を味わうなら?
藤吉:和食割烹、本格的な料理店ですね。小田原にはミシュランガイドで星を獲得してきた名料理店がありますし。