偏愛的な株主へのススメ
近年の株主総会の特徴として、エンターテイメント性が高いことが挙げられる。様々な演出をこらして、まるで学芸会のような催しを実施する会社も増えてきた。主催する会社と出席する株主が全員で楽しめる一体型が魅力溢れる企業の指針とも言える。小笹:私が印象に残っている株主総会は3つあります。1つ目は、「石井食品」です。
42歳の5代目石井智康社長は、「株主=会社のファン」という考えの持ち主。株主総会と株主イベントを別日にして開催。社長はアイデアマンで、イベントでは服部学園の服部幸應先生や佰食屋創業者の中村朱美さんを講師に招き、食品添加物、食育、そして廃棄ロスを減らす商品づくりに関する講演会を開催しながら自らの総会議案説明も盛り込みました。ロングセラーのミートボールを持つ同社の株主=消費者という関係が構築されたファン・マーケティングに成功した好例だと思います。
2つ目は、糸井重里氏が社長を務める「ほぼ日」。2017年に上場したのですが、総会前にイベントを行い、とても盛り上がってから総会を楽しくスタートさせるノウハウが既に確立しています。
そして3つ目は、「良品計画」。1時間の総会後、役員が壇上から降りてきて、株主と同じ目線で懇親会に臨む姿勢は、利益追求だけでない企業スタイルだといっていいでしょう。
谷本:それでは、ファーストコンタクトで面白い会社の見つけ方はどういったところからでしょう?
小笹:フックは、どこでもいいのです。ネットニュース、新聞、雑誌、人から聞いた話…とあらゆるところに情報は散らばっています。もしも「あ! この会社、気になるな」とひらめいたら、忘れないうちに500円とかでミニ株を買っちゃうのをお薦めします。例え少額でも、そこで株主としての権利を得られます。その場合、社長や社外取締役など、どのような人が運営していてどのようなビジネスモデルがあるのか?に注目して下さい。究極は、「この人になら騙されてもいいな」と思えるかどうか。
例えば、「ローランド」は、音楽好きで海外ビジネスを熟知しているシャープの片山氏が社外取締役に就任した。かと思えば、「SHIFT」に今をときめくキーエンスの元社長が参画されたり。つまり、偏愛的に「人」から入るのも、ひとつのやり方です。一般的に、社長が5割前後の株を所有していた方が株価上昇につながる企業成長に貪欲でいいとも言われますが、そこだけにこだわる必要はないと考えます。