国内

2023.06.21 19:00

凄腕投資家 直伝「株主総会」が10倍楽しくなる方法

谷本:単に利益を追求するだけでなく、その企業を応援したいというニーズの高まりについて、これまでの流れもふまえてどのように分析していますか?


小笹:
まず、人と会った時に、いきなり身長や体重を聞く方はいらっしゃらないと思いますが、投資の世界では、数字ありき。そんなリアルな現実で成り立っている株式マーケットですが、改めて株主総会の変遷を辿っていくと、1990年代までは、総会屋や乗っ取り屋が目立ち、暴力団との蜜月関係も囁かれる企業がある荒れた時代でした。

やがて2000年に入り、ネットの普及によって、個人投資家が飛躍的に増えていきました。私自身の株主総会デビューは、2001年のニッスイ(日本水産)が初体験。張りきって質問をしたわけですが、「質問が出たのはとても久しぶりでした」と後で聞き、非常に驚いたことを記憶しています(笑)。それだけ株主総会は、閉ざされた世界だったと知ったわけです。

一方、異例づくめの総会といえば、私が「Bloomberg TV」の記者時代に取材した村上ファンドの総会は忘れられません。運営する村上世彰氏がアパレルメーカー株を買い占め、新たなファッションビルの建設資金を自社株買いに使うよう、筆頭株主として要求したのです。総会は荒れに荒れて長時間にわたり開催され、中断された時間を使って村上氏が囲み取材を受けたのを鮮明に覚えています。

紆余曲折したそのような時代を経て、過去最高に日本市場が盛り上がっている2023年ですが、「株式会社1丁目1番地」に居住している私達が、日本企業を応援する意味でも投資に参加しない手はない!と切実に思います。

ココをチェックすれば間違いなし! 株主総会ミシュラン8箇条

複眼経済塾が考える、株主総会の場で、見るべきポイントは、8点あるという。

1. 第一印象。
2. 社長は自分の言葉で話していたか。
3. 社長の説明内容は分かりやすかったか。
4. 事業に対する社長の熱意は感じられたか。
5. 参加社員の雰囲気。
6. 居心地がいい空間か。
7. 演出に工夫があったか。
8. 質疑応答の内容。

「余談ですが、IR説明会で、社長に対してカバンを持ちましょうか?という腰巾着のような社員がいた場合、その企業の社風が瞬時に判断できる材料になります。私はそういった細かい部分も見逃しません」という。
谷本:それでは、だめな株主総会とは、どのような総会なのでしょうか?

小笹:究極には、「社長がいない総会」です。ある企業の総会に出席した時、社長不在でした。四季報でみると業績は伸びそうでしたが、危険を察し株を売却。その後、社長は辞任。株価は大暴落しました。株主総会では、「数字・報告・人事」の3種の神器に加えて、社長が描く未来の話を聞くことに意義がある。ここを大切にしない会社=社長は、投資家に不安感を与えるだけで、百害あって一利なしとみなされます。

谷本:
数多くの株主総会に出席していらっしゃる小笹さんですが、最近の株主総会の特徴を教えて下さい。

小笹:今は、リアル会場とオンラインで開催する「ハイブリッド型」と、「バーチャルOnly」で開催される2つが増えています。企業の熱量が直接伝わるので、会場参加できる「ハイブリッド型」の方が私は好きですね。「バーチャルOnly」で、社長の目線がカメラから外れているにもかかわらず、怖いのでしょうか、社員が見る場所の修正を社長に進言しない総会があり、社長が最後まで明後日の方向を向いて喋った総会がありました。これでは全く会社の魅力が伝わってきませんし、参加している気にもなれません。これを、「バーチャルOnly裸の王様型」と呼びましょうか(笑)。
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インタビュアー=谷本有香(Forbes JAPAN 執行役員・Web編集長) 文=中村麻美

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