宇宙

2023.06.18 12:30

「地球型惑星発見装置」搭載の巨大マゼラン望遠鏡、2800億円で開発中

組み合わせた受光領域の直径25.4mというのは、系外惑星の研究にとって決定的に重要だ。光を放つ恒星のすぐ近くを周回しているはるかに暗い惑星を識別しなくてはならないからだ。それは、既存世代の望遠鏡の能力を超えている。

巨大マゼラン望遠鏡の巨大な主鏡は、直径8.4mの鏡、7台で構成される。そのうち6台はアリゾナ大学リチャード・F・カリス鏡研究所ですでに製作を終え、7台目は今年中に完成する予定だ。

これらの鏡の長い旅路を想像してみるのもよいだろう。おそらくそれらはヒューストンまで陸輸された後、船でパナマ運河を渡り、南米の海岸に沿ってチリ中部のコキンボ(あるいは別の港)に到達する。その後トラックでパンアメリカンハイウェイを(非常に)ゆっくりと進み、山岳道路を通ってラス・カンパナス天文台に届けられる。

徐々に形になりつつある巨大マゼラン望遠鏡(GIANT MAGELLAN TELESCOPE – GMTO CORPORATION)
徐々に形になりつつある巨大マゼラン望遠鏡(GIANT MAGELLAN TELESCOPE – GMTO CORPORATION)

地球大気との戦い

皮肉なことに、遥か彼方の系外惑星の大気を調査する競争は、地球の擾乱(じょうらん)大気に妨害され、画像は鮮明さを失う。だから宇宙望遠鏡が発明された。しかし、最新の地上望遠鏡は、巨大マゼラン望遠鏡を含め、補償光学と呼ばれるスマートなシステムによって、大気によるにじみを修正することができる。

波として地球の大気を通過した光は「不安定になってポテトチップのように波打ちます」とバーンスティンはいう。「その波打ちを測定し、正反対の形状を可変鏡にあてがうことで、波を完全に平滑化します」巨大マゼラン望遠鏡の補償用副鏡は、主鏡の表面を1秒間に2000回変形させることで大気の乱流に適応することができる。この技術は数十年前からあったが、この新時代が以前と違うのは、鏡を制御するアルゴリズムが進化し、鏡を動かすアクチュエータがいっそう小型化されたことだ。

驚くべきことに、その結果は宇宙ベースの望遠鏡を超える品質の光学画像だ。JWSTの主鏡は直径6.5mしかない。

新しい望遠鏡が必要な理由

巨大マゼラン望遠鏡は米国超大型望遠鏡プログラムの一環だが、5カ国、13の科学機関からも支援を受けている。計画が始まったのが2003年という大規模な事業だ。

「こうして進歩を続けていくのです」とバーンスティンはいう。「宇宙物理学は、基礎物理学、素粒子物理学、生物学、地質学および化学に膨大な影響をもたらします。そしてもし投資を続けなければ、もし各世代が次世代のツールへの投資を怠れば、進歩を続けることはできません」

forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫

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