宇宙

2023.06.12 12:00

千年に一度の宇宙大爆発の謎、ついに解明

遠藤宗生

史上最も明るいガンマ線バースト「GRB 221009A」。観測衛星ニール・ゲーレルス・スウィフトのX線望遠鏡で撮影(NASA/SWIFT/A. BEARDMORE (UNIVERSITY OF LEICESTER))

現在、風車銀河(M101)の中で明るく輝いている超新星「SN 2023ixf」では、死にゆく恒星が起こした爆発で、太陽1000億個分の光が放たれている。ただ、これは史上最大の宇宙爆発事象ではない。

2022年10月9日には、これよりも明るいガンマ線バースト「GRB 221009A」が、世界各地の望遠鏡により観測された。その明るさは超新星の10倍以上にもおよび、「BOAT(Brightest of All Times=史上最も明るい)」と呼ばれた。このガンマ線バーストは、衰えるべき時を過ぎてもなお輝き続けた。

極めて稀な現象

千年に一度の現象と言われるGRB 221009Aは、太陽系からわずか24億光年(宇宙基準では近い距離だ)の位置でブラックホールを誕生させた巨大な恒星の崩壊によって生まれたと考えられている。しかし科学者らは、GRB 221009Aがこれほど明るく、長く続いた理由が分からなかった。

その謎が、このたび解明された。

米科学誌サイエンス・アドバンシズで7日に発表された論文の著者の一人である英バース大学物理学科のヘンドリック・ファン・エールテン博士によると、ガンマ線バーストにより放出されたジェットが直接地球に向けられたことで、これほどの明るさが生じたとみられるという。ファン・エールテンはこれを、「まるで自分に向けられたホースから水を噴射されるようなもの」と例えている。

遅い減衰

論文はまた、爆発の残光がゆっくりと減衰した理由について、爆発の後に著しく大量の物質が移動したため、通常よりも広い範囲に出現したからと説明している。「ガンマ線バーストのジェットは崩壊する恒星の中で形成され、その内部を通過する必要があります。今回異なっていたのは、 恒星物質とジェットの間で起きた混合の量だと考えられます」とファン・エールテンは説明する。

「衝撃によって熱せれたガスは、特徴的なジェットの痕跡が残光から発せられた放出物の中に消えるまで、地球から見える状態が続きました」
チリにあるジェミニ・サウス望遠鏡(Dr. Nic Scott/NASA Ames)
チリのジェミニ・サウス望遠鏡(Dr. Nic Scott/NASA Ames)

「ガンマ線バーストのロゼッタ・ストーン」

研究チームはチリのジェミニ・サウス望遠鏡を使ってこの現象を観測した。論文の主著者で、ジョージ・ワシントン大学の博士課程を最近修了したブレンダン・オコナー博士は、今回の研究結果について、宇宙で最も極端なガンマ線バーストが他の一般的な事象の標準的物理と合致しない理由の解明に大きく貢献する可能性があると考えている。

「このバーストは非常に明るいだけでなく、地球の近くで起きていることから、ブラックホールの形成やダークマター(暗黒物質)モデルの検証など、これらの爆発に関する最も根本的な疑問を解明する上で千年に一度の好機だと考えています」とオコナー博士は語る。「GRB 221009Aは、長期型ガンマ線バーストのロゼッタ・ストーンのようなものかもしれません」

forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫・編集=遠藤宗生

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