Nature Astronomyで6月12日に公開された論文は、SN Zwickyと命名されたその異常に明るい超新星の詳細を報告しており、太陽系から40億光年以上離れているにもかかわらず、クローズアップ写真の撮影が可能だった。
これは「重力レンズ効果」という重力によって遠方の物体が拡大される現象のおかげだ。前方にある物体の重力場が非常に強いためにその周辺の空間が歪められ、はるか彼方の天体から届く光を円環状に曲げることで、その天体の存在を明らかにするとともに拡大する。
アインシュタインリング
この現象はアインシュタインリングとも呼ばれ、象徴的な理論物理学者であるアインシュタインによる時空に関する理論が由来であり、SN Zwickyを拡大するレンズの役目を果たした前方の天体は、巨大な銀河だった。カリフォルニア州パロマー天文台にあるツヴィッキー・トランジェント・ファシリティー(ZTF)の望遠鏡を使って発見された後、SN Zwickyの異常な明るさは、ハワイのケック天文台、チリの超大型望遠鏡(VLT)および軌道を周回するNASAのハッブル宇宙望遠鏡のターゲットとなった。
「あの夜、観測していた私は、拡大されたSN Zwickyの画像を見て呆然としました」と、カリフォルニア工科大学(カルテック)天文台のスタッフでBright Transient Surveyと呼ばれるZTFの超新星研究を率いるクリストファー・フレムリングはいう。「ここカルテックではBright Transient Surveyで何千もの一時的な現象を分類することで、非常に稀な現象を発見する独自の能力を持っています。SN Zwickyはその一例です」
ケック天文台のNIRC2と補償光学システムを用いて撮影したSN Zwickyの鮮明な画像(Joel Johansson./W. M. KECK OBSERVATORY)
距離計算機
研究チームは4枚のSN Zwickyの画像によって、明るさの原因が重力レンズ効果のためであることを確認した。SN Zwickyは「標準光源」と呼ばれる超新星クラスに分類されており、その明るさは距離の計算に用いられる。「光源が遠くなるほど、光は暗くなります。暗い部屋で見るロウソクと同じです」とメリーランド大学の天文学者で、国際研究チームのメンバーであるイゴール・アンドレオニはいう。「この方法で2つの光源を比較することで、銀河自体を実際に調べることなく、独立して距離を測定できます」重力レンズ効果は、驚くほど遠方にある物体の存在を推論し、その質量を測定する最善の方法だ。そしてこの「アインシュタインリング」には、超新星がよく見えるようになるだけではない、ずっと大きな意味がある。
ダークエネルギーの解明へ
「SN Zwickyの発見は、近代天文学装置の驚くべき能力を示しただけでなく、この宇宙をかたちづくっている基本的な力を理解する探究の大きな一歩です」と論文主著者でストックホルム大学Oskar Klein Centerのディレクター、エリアル・グーバーはいう。SN Zwickyのような重力レンズで拡大された超新星は、宇宙の膨張を加速する原因である謎の力であるダークエネルギーを研究し、宇宙が膨張する速度を示すハッブル定数の計算を含め宇宙膨張を説明している現行モデルを改善する新たな方法になるかもしれない。
チリのベラルービン天文台(2025年に「ファースト・ライト」(初観測)の予定)が、SN Zwickyのような超新星をもっと発見することを期待されている。史上最大のデジタルカメラ、3.2ギガピクセルCCDイメージングカメラを使って空全体をわずか3夜で観測することが可能であり、実質的に宇宙を映す動画を生成することで、超新星やガンマ線バーストのような一時的天文現象を見つけることができる。
(forbes.com 原文)