“オラファー・エリアソンの部屋”など、特定の作家や作品に合わせた空間を作ったり、ときどき展示替えをしたりしながら、より多くの作品を多くの方に見てもらいたいですね。展示空間作りに関しては、アートコレクションの大先輩である大林組の大林剛郎会長にも、メンターとしてアドバイスをいただいています。
深井:そうして大林会長から影響を受けた植島さんが、また別の経営者の方にノウハウを伝授する。もしくは植島さんと直接の接点がなくとも、こういったメディアを通して、自分も始めてみようかというモチベーションにつながるかもしれない。そのように波及して、アートコレクションを始める方が増え、日本のアートシーンがよりアクティブになっていく……。これから、そんな理想的なサイクルが生まれてくるかもしれませんね。
コレクションを始めてから、ご自身のライフスタイルも大きく変わりましたか?
植島:実際に作品を見に行くだけではなく、スマートフォンでギャラリーのホームページやオークションリストをチェックしながら、気になる作家がいたらインスタやCV(経歴書)を見て、というようなことをひたすら続けています。アートに長い時間を割くようになりました。
海外を訪れる際にも、以前は旅行のついでに美術館に行っていたのが、今ではアートフェアや個展にあわせて旅先を決めるスタイルに変わりました。5月末は世界最大規模のアートフェア「フリーズ・ニューヨーク」があり家族全員でNYに行きましたし、週末には幼い娘を連れてギャラリー巡りをしています。
スマホがあればどこでも仕事ができるので、アート活動をしながら、同時に仕事もこなしていきます。美術館で作品に囲まれながらメールの返信をすることもありますね。
深井:休まる暇がないように思いますが……!?
植島:特殊な休み方をしているのかもしれませんね。仕事モードの状態から、脳の動かし方を変えることでリラックスできているようです。映画やドラマを見ることも好きなのですが、その世界に没入することで一度現実から離れる。アートを見ている時もそうです。そしてそこで得た刺激をまた仕事に活かす。そういう循環が、私にとっては心地よいです。
植島幹九郎◎UESHIMA COLLECTIONオーナー。1979年千葉県生まれ。1998年渋谷教育学園幕張高等学校卒業、東京大学理科一類入学。東京大学工学部在学中にドリームキャリアを起業。事業家・投資家として多角的にビジネスを展開する傍ら、国内外のオークションハウスやギャラリーを渉猟。草間彌生、村上隆、名和晃平等の日本を代表する作家、ゲルハルト・リヒター、ダミアン・ハースト、バンクシー等の海外作家、若手作家のコレクションを続けている。
深井厚志◎編集者・コンサルタント。1985年生まれ。英国立レディング大学美術史&建築史学科卒業。美術専門誌『月刊ギャラリー』、『美術手帖』編集部、公益財団法人現代芸術振興財団を経て、現在は井上ビジネスコンサルタンツに所属し、アート関連のコンサルティングに従事。産官学×文化芸術のプラットフォーム、一般財団法人カルチャー・ヴィジョン・ジャパンでの活動ほか、アートと社会経済をつなぐ仕事を手がける。