アート

2023.06.15 08:30

1年半で600点収集 「共有する」アートコレクター植島幹九郎の想い

鈴木 奈央
植島:渋谷で、2024年春のオープンを目指しています。東京のど真ん中で、国内外、若手から大御所までの作家の作品を展示することで、海外から来る方には、日本のアートシーンを紹介し、日本の方には、目にする機会が少ない海外作家の作品を実際に見てもらう。そういったなかでグローバルな交流も生まれていくのではないかと考えています。

“オラファー・エリアソンの部屋”など、特定の作家や作品に合わせた空間を作ったり、ときどき展示替えをしたりしながら、より多くの作品を多くの方に見てもらいたいですね。展示空間作りに関しては、アートコレクションの大先輩である大林組の大林剛郎会長にも、メンターとしてアドバイスをいただいています。

深井:
そうして大林会長から影響を受けた植島さんが、また別の経営者の方にノウハウを伝授する。もしくは植島さんと直接の接点がなくとも、こういったメディアを通して、自分も始めてみようかというモチベーションにつながるかもしれない。そのように波及して、アートコレクションを始める方が増え、日本のアートシーンがよりアクティブになっていく……。これから、そんな理想的なサイクルが生まれてくるかもしれませんね。

コレクションを始めてから、ご自身のライフスタイルも大きく変わりましたか?

植島:実際に作品を見に行くだけではなく、スマートフォンでギャラリーのホームページやオークションリストをチェックしながら、気になる作家がいたらインスタやCV(経歴書)を見て、というようなことをひたすら続けています。アートに長い時間を割くようになりました。

海外を訪れる際にも、以前は旅行のついでに美術館に行っていたのが、今ではアートフェアや個展にあわせて旅先を決めるスタイルに変わりました。5月末は世界最大規模のアートフェア「フリーズ・ニューヨーク」があり家族全員でNYに行きましたし、週末には幼い娘を連れてギャラリー巡りをしています。

スマホがあればどこでも仕事ができるので、アート活動をしながら、同時に仕事もこなしていきます。美術館で作品に囲まれながらメールの返信をすることもありますね。

深井:休まる暇がないように思いますが……!?

植島:特殊な休み方をしているのかもしれませんね。仕事モードの状態から、脳の動かし方を変えることでリラックスできているようです。映画やドラマを見ることも好きなのですが、その世界に没入することで一度現実から離れる。アートを見ている時もそうです。そしてそこで得た刺激をまた仕事に活かす。そういう循環が、私にとっては心地よいです。

自社オフィスの壁という壁には、コレクションの作品が飾られている

自社オフィスの壁という壁には、コレクションの作品が飾られている(写真=小田俊一)


植島幹九郎◎UESHIMA COLLECTIONオーナー。1979年千葉県生まれ。1998年渋谷教育学園幕張高等学校卒業、東京大学理科一類入学。東京大学工学部在学中にドリームキャリアを起業。事業家・投資家として多角的にビジネスを展開する傍ら、国内外のオークションハウスやギャラリーを渉猟。草間彌生、村上隆、名和晃平等の日本を代表する作家、ゲルハルト・リヒター、ダミアン・ハースト、バンクシー等の海外作家、若手作家のコレクションを続けている。

深井厚志◎編集者・コンサルタント。1985年生まれ。英国立レディング大学美術史&建築史学科卒業。美術専門誌『月刊ギャラリー』、『美術手帖』編集部、公益財団法人現代芸術振興財団を経て、現在は井上ビジネスコンサルタンツに所属し、アート関連のコンサルティングに従事。産官学×文化芸術のプラットフォーム、一般財団法人カルチャー・ヴィジョン・ジャパンでの活動ほか、アートと社会経済をつなぐ仕事を手がける。

インタビュー=深井厚志 文=菊地七海 編集=鈴木奈央

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