見え隠れする「デサンティス対策」
・出生地主義による市民権付与の廃止トランプは5月30日、米国で生まれた人にほぼ例外なく市民権を与える「出生地主義」制度について、米国の法律を犯すことに「報酬」を与えるものだと批判し、再選すれば大統領令を出して廃止すると約束した。トランプは大統領在任中も同様の主張をし、その根拠として、合衆国憲法修正第14条は不法移民の子どもに自動的に市民権を与えることは保障していないとする非常に疑わしい法理論をもち出していた。
・議会襲撃事件の関与者への恩赦
トランプは5月10日に開かれたCNNの対話集会で、2021年1月6日の連邦議会議事堂襲撃に関与したとして有罪判決を受けた者の「大部分」に恩赦を与えたい意向を示した。2022年9月には関与者への「完全な恩赦」を検討すると保守派のラジオ番組司会者ウェンディ・ベルに語っていたが、やや修正した。
・ストップ・アンド・フリスクの義務化
トランプは全米の警察に対して、通行人を呼び止めて所持品検査をする「ストップ・アンド・フリスク」の実施を義務づける考えも示している。この取り締まり方法は2013年にニューヨーク州の連邦判事から違憲と判断され、有色人に対して差別的に行われているという批判も根強い。トランプは2016年の大統領選でもこれを公約に掲げていた。
・ジェンダー・アファーミング・ケアの制限
トランプは、患者のジェンダー・アイデンティティ(性自認)を尊重する医療「ジェンダー・アファーミング・ケア」を未成年に提供した医師を罰する法案の可決を議会に呼びかけると述べている。共和党主導の州は子どもへのジェンダー・アファーミング・ケアを制限したり、性自認に合ったトイレの使用を禁止したりする法律を相次いで成立させており、民主党やLGBTQ団体から批判されている。
・批判的人種理論の排除
トランプはまた、人種差別を制度的、社会構造的な問題としてみる「批判的人種理論」や性自認、あるいは政治的、人種的、性的に「不適切」なことを教えている学校には、連邦政府からの資金拠出を停止する方針も1月に示している。それに先立って、トランプの最大のライバルであるデサンティスが、学校で性的指向や性自認、人種について教えることを禁じた法律をフロリダ州で成立させていた。
・学校規律の見直し
教室で教えられる内容に加え、トランプは学校の規律に関する連邦政府の基準についても司法省や教育省に抜本的な見直しをさせ、「左派による学校規律の乗っ取りを終わらせる」とも宣言している。トランプは大統領在任時、有色人の生徒が偏って懲戒の対象にならないようにしたバラク・オバマ政権の措置を取り消した。
・一律関税の導入
米中間の緊張が高まるなか、トランプは3月、外国から輸入する大半の製品について一律の関税を設けることや、外国へのアウトソーシングを阻止する取り組みを進めることも表明した。大統領在任中には、中国からの輸入品に25%の関税を課した。