データの共有が鍵に?
——小売の販売データや在庫データが、メーカーや物流に共有できると良いですね。井村:そうですね。ただ、小売の倉庫はキャパシティの限界があるので、在庫は最低限でオペレーションしているところが多いと思います。
今の商慣習では、今日発注すれば明日届くという前提があるため、在庫量を増やさなくてもいいと考えていて、その分卸やメーカーも需要を予測しながら、欠品を避けるために在庫を多めに持ったり、生産したりしています。予測が当たらなければ余剰在庫、品不足になります。
特にコンビニは、1日3〜4回在庫の補充をします。在庫を置く場所がないこともありますが、頻度が多すぎるように思います。商品がちょっと話題になるとあっという間に店頭在庫が品切れしますが、メーカーには在庫がたくさん残っていることも少なくありません。人が少し多めに買うだけですぐに欠品してしまうのです。
井村直人氏
——コンビニはフランチャイズなので、在庫は店の負担になります。複数の店舗で在庫を共有できれば、消費者も店舗も物流もメリットがありそうです。
野田:エリア単位の在庫の共有・発送ができれば、コンビニの課題を解決できる可能性がありますね。ただし店によって商流が違うこともありますし、エリアの需要予測を含めて誰が受発注管理するのかという課題があります。実現できれば大きく変化しそうですね。
——在庫だけでなく運送状況もデータ化できそうです。誰が何時間かけて運んだのか、荷物が適切に運ばれているのかをトレースすることもできるのでしょうか。
井村:配送センターから届け先までのラストワンマイルは比較的管理しやすいですが、幹線道路の長距離ドライバー、下請けのドライバーの管理は難しそうです。
野田:長距離のドライバーは、途中で別のドライバーと交代して戻るという中継輸送も今後増えるかもしれません。
井村:野村総研による試算では、2030年に35%の荷物が運べなくなります。しかし共同配送にした場合を試算すると、沖縄は不足が解消されてプラスに、他のエリアでも不足が軽減します。ですので、今よりもさらに共同配送が進む可能性もあります。