彼女は2022年の「30 Under 30」に選ばれた際、「犬でも人間でも、どのような種であれ、老化に対して承認された薬はありません。私の人生の目標は、最初の薬を承認させることです」と語っていた。
そして今、その目標に一歩近づいた。ロイヤルは、犬用に開発した長寿薬の1つの臨床試験について、FDAからプロトコル合意を得たと発表したのだ。この臨床試験が望ましい結果を出せば、この薬は2025年にも市場に出る可能性がある。
「私たちは、犬用の老化防止薬を承認するための道を作っています」とハリウア(28)は言う。「誰かが一度解明すれば、他の人にも応用できます」。
同社の規制・戦略担当上級副社長であるカレン・グリーンウッドによると、この研究のデザインは比較的単純だという。年内の開始を目指しているこの研究は、人口統計学的に類似した老犬を、処置を施したものとそうでないものに分けて実施する。そして、その寿命と生活の質を、獣医学的な基準と飼い主の観察に基づいて評価する。
FDAとの連携で課題に直面
アメリカ食品医薬品局(FDA)と連携する際に同社が直面した課題は、FDAは通常「疾患に対する医薬品」を認可することを目的としているということだ。しかし、ロイヤルが取り組んでいる2つの薬は、疾患を対象としたものではなく、犬の長生きを助けるものだ。そのため、FDAから承認につながる可能性の高い試験デザインを許可する”プロトコル合意”を得るには、何度も話し合いを重ねる必要があった。グリーンウッドは、彼女のチームが「統計学者とマニアックな会話をする、本当に楽しい時間だった」と言う。
「FDAとの仕事は本当に楽しいです」と彼女は続ける。「彼らは偉大な科学者なので、何か新しいものを彼らに持っていくのはいつも楽しいのです」。
犬の短命の理由の一端は、家畜化した近親交配?
ハリウアは、人生の大きな悲劇のひとつである、人間が犬よりもずっと長生きすることに注目し、2019年にロイヤルを設立した。犬の短命の理由の一端は、そもそも犬を生み出し、家畜化した近親交配にある、と彼女は言う。しかし、犬が長生きする可能性はある。例えば、Purina(ピュリナ)の研究では、ラブラドール・レトリーバーの体型を維持するためのカロリー制限食が、寿命だけでなく生活の質をも向上させることが判明している。しかし、犬を飼っている人なら誰でも知っていることだが、犬におやつをあげずにいることはほとんど不可能だ。
ロイヤルの薬が目指しているのは、カロリー制限食によって活性化される代謝経路と同じものを活性化することだ。理論的には、犬の健康寿命を何年も延ばせる可能性がある。臨床試験では、この理論が試されることになる。
そして、彼女には支持者がいる。創業以来、ロイヤルはBrowder Capital(ブラウダー・キャピタル)やKhosla Ventures(コスラ・ベンチャーズ)、バイオテック企業というよりはより伝統的なソフトウェア企業をサポートしている企業などから5800万ドル(約79億円)を調達している。
しかし、ロイヤルこそシリコンバレーが得意とする企業だ。
「私が面白いと思うのは、厳密で規制の厳しい科学を行うことと、それがほとんどシリコンバレーのVCから資金を提供されているというアイデアです。私たちはボストンのバイオテック企業ではありません」と彼女は笑い、さらにこう続ける。
「大きな技術的問題に賭けるというのは、実はシリコンバレーでは非常に古いタイプの投資で、ここ数年でそれが失われていたのです。ロイヤルが他の場所でスタートできたとは思えません」
(forbes.com 原文)