ここで言及された「阿部ちゃん」こと阿部勇樹は40歳だった2021シーズン限りで、「平さん」こと平川忠亮は39歳だった2018シーズン限りで引退した平川忠亮を指す。浦和のレジェンドたちが身にまとったオーラを受け継ぎ、さらにチームを優位に立たせるゴールまで決めた興梠へ、土田SDはACL優勝後に応じたオンライン取材で思わず目を細めている。
「今シーズンの興梠慎三がチームのなかで放っている存在感は、本当に計り知れないほど大きなものになっている。ピッチ上でもそうですし、ロッカールームのなかでも本当にチーム全体にいい影響を与えてくれる選手の一人でもあります。今シーズンへ向けた準備のところも含めて、そうしたものをピッチの内外で表現してくれている。今回のACLの結果にも大きな力を与えてくれたと思っています」
クラブや監督が求める戦力のスカウティングやリストアップを行い、同時に監督や選手、スタッフへの評価などを担当しながら土田SDの業務を補佐する西野努テクニカルダイレクター(TD)も、同じオンライン取材のなかで興梠にこう言及した。
「あえて言うならば、いい意味で少し予想を裏切ってくれているし、逆の見方をすると、期待していた選手たちが期待通り活躍できてない、という部分もあります」
浦和のACL通算3度目の優勝は大会史上で最多となったが、国内タイトルへ目を向ければ、J1リーグ制覇は初優勝した2006シーズンの一度だけとなっている。
過去、ガンバ大阪も、鹿島もACLで優勝したが、同じシーズンのJ1リーグ戦では頂点に立てていない。だからこそ、興梠は優勝直後に「いまの浦和レッズは最もそこに飢えている」と、初の快挙となるダブル制覇を新たな目標に掲げた。