アジアサッカー連盟の公式サイトに掲載されたデータによれば、浦和のボール保持率は29.4%と、70.6%に達したアル・ヒラルの後塵を拝し続けた。シュート数も6対10で上回られ、さらに浦和が放った枠内シュート数に至っては「ゼロ」と記されていた。
ボールを回すアル・ヒラルへ、それでも興梠が先陣を切って前線からプレスをかける。チーム全体が連動し、後半3分に相手のオウンゴールであげた先制点を死守。真っ赤に染まったスタンドに後押しされながらつかんだ勝利を、興梠は次のように表現した。
「不細工な試合でも、今回に関しては勝ちたかった、というのが正直な気持ちですね」
興梠にとって今回は2017、2019年大会に続く3度目のACL決勝だった。相手はすべてアル・ヒラルであり、前者は2戦合計2-1で美酒に酔い、後者は同じく0-3で完敗を喫している。3度目の頂上決戦へ抱く思いを、興梠はこう明かしている。
「例え負けたとしても、特に若い選手たちにとっては無駄なことじゃない。でも、僕は年齢的にも最後のチャンスだと思っていた。負けることは絶対に許されなかったし、その意味では2017年とも2019年とも気持ち的にはちょっと違ったのかな、と」
興梠が言及した「不細工」とはピッチ上で愚直かつ泥臭く走り回り、体を張って勝利を求める姿を指す。浦和に関わるすべての人々が一丸になった勝利の要因を、同い年でこちらも3度目の決勝になる守護神・西川周作は興梠の背中に帰結させた。
「今日は前線から慎三が何度も(相手のボールホルダーを)追ってくれた。頑張ってくれている姿勢を見ると、後ろにいる自分たちも勇気づけられました」
興梠は第1戦で後半22分に、第2戦では同27分に、ともにFWホセ・カンテとの交代でピッチを後にしている。精根尽き果てた後はベンチで声をからし、チームメイトたちを鼓舞し続けた興梠は、新体制発表会見で語った抱負をほぼ完璧に具現化していた。