スポーツ

2023.05.20 10:00

ACLの制覇へ導いたベテラン「浦和の興梠」の存在

ベテランは復活した。興梠 慎三/photo by Hiroki Watanabe (Getty Images)

「この年齢になってくると1年、1年が勝負になってくる。自分自身、いいパフォーマンスができるのは今年までかなとちょっと思っている。いままで以上に努力して、チームのために、そして自分のために一回本気で頑張ってみようと思ったので」
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例年の興梠はチームが始動する直前までオフを満喫。キャンプインしてから徐々にコンディションを上げていく調整方法を貫いてきた。しかし、2021、22シーズンと怪我に苦しみ、不本意な結果に終わっていた以上は何かを変えなければならない。

浦和へ呼び戻してくれた土田SDと男の約束を交わした。この状況で一念発起しなければ一生悔いが残る。キャンプから調子がいいと自負してきたベテランは、キックオフカンファレンスで「自主トレは大事ですね」と笑顔を浮かべている。

果たして、興梠のコンディションのよさは浦和の危機を救うことになる。

愚直に、泥臭く

ポーランド出身のマチェイ・スコルジャ新監督に率いられた浦和は、2月18日の開幕節でFC東京に、同25日の第2節で横浜F・マリノスにともに0-2で敗れた。
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1トップで先発したブライアン・リンセンがフィットしない状況で、ともに途中出場で出色のプレーを見せていた興梠の先発待望論が、ファン・サポーターの間で沸き起こった。

そして、3月4日のセレッソ大阪との第3節から興梠が先発に定着。直後から浦和は4連勝を含めて5勝2分けとV字回復を遂げ、興梠もその間に2ゴールをあげている。

サウジアラビアの強豪アル・ヒラルとのACL決勝を迎えても、興梠は代替の効かない存在感を放ち続けた。敵地リヤドに乗り込んだ4月29日の第1戦。前半早々に連携ミスで先制される嫌な流れを、同点ゴールとともに断ち切ったのは興梠だった。

自陣から発動させたカウンターで、味方が放った自身へのスルーパスを相手選手がカットする。しかし、コースを変えてゴールに向かったボールに相手GKも触れない。そのまま左ポストを直撃し、はね返ってきたところを相手選手より早く反応して押し込んだ。

ACLに出場したすべての日本人選手で最多となり、大会全体を通しても歴代5位にランクされる興梠の通算27ゴール目で追いついた浦和は、そのまま1-1で引き分けた。勝てなかったものの、アウェイゴールをもぎ取った価値は大きかった。
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