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2023.05.13

麻薬探知犬は血筋が大事? 犬の行動に寄与する遺伝的基盤が確認される

プレスリリースより

世界の空港で違法薬物の持ち込みを防ごうとお仕事に励んでくれる麻薬探知犬ですが、適性試験の合格率は30〜50パーセント。その難関を突破したエリート犬たちには、共通する遺伝的な特徴がありました。

世界的に麻薬探知犬として使われているのはジャーマンシェパード(シェパード)とラブラドールレトリバー(ラブ)の2犬種。この仕事に向いているのはどの子か、先にわかっていれば無駄な訓練による犬と人への負担もコストも下げられます。そこでペット保険のアニコムは損害保険は、京都大学、帝京科学大学と共同で、麻薬探知犬の訓練を受けたシェパードとラブ326頭を対象に遺伝子の特徴と行動の傾向を調査しました。

行動の傾向では、トレーニング中の行動評価から、活動性、大胆性、集中力、人に対する友好性、独立性、標的(訓練で使うタオル)に対する関心、犬に対する寛容性の7項目について分析を行いました。そこでは、人に対する友好性と犬に対する寛容性の2項目において、シェパードよりもラブのほうが高いことがわかりました。雌雄の違いは、この調査では認められませんでした。

この7つの行動の傾向と試験の合否に対する遺伝的な寄与度合いを見ると、シェパードでは大胆性が、ラブでは犬に対する寛容性が試験の合否に大きく影響していました。また、シェパードの標的に対する関心とラブの人に対する友好性には、11個の遺伝領域が関連していることもわかりました。

つまり、麻薬探知犬に適しているかどうかを決める行動の傾向には、遺伝的な基盤が存在していたということです。そこを調べて麻薬探知犬としての適性がわかれば、そうした子だけを選んで訓練することも可能になります。また、麻薬探知犬の訓練以外でも、一般的なしつけを行う際にも、遺伝子から行動の傾向がわかれば、その子にあった訓練が効率的に行えるかもしれないということです。

訓練やしつけをしないまでも、この研究が進めば、遺伝子解析からその子がいちばん幸せに暮らせる環境を作ってやることも可能になるでしょうね。

プレスリリース

文 = 金井哲夫

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