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2023.04.19

プラスチックが肥料になる「循環化」実現へ、千葉大学が発表

プレスリリースより

植物由来プラスチックは、分解性は高いものの安定性が低く実用性に乏しいという課題がありました。千葉大学は、植物由来のモノマーを重合させて用途に応じた実用的なプラスチックにする機能化方法を発見。植物から生まれて最後には植物の肥料になる循環型プラスチックの実用化が見えてきました。

プラスチックとは、エチレンやプロピレンなどの基質(モノマー)を鎖状につなげたポリマーのことを言います。石油ではなく植物の糖分などから得られたモノマーで構成されるポリマーが、いわゆる植物由来プラスチックということです。植物由来プラスチックは生分解性プラスチックとも呼ばれ、バクテリアや菌類によって水と二酸化炭素に分解できるため、環境にやさしいとされています。

プラスチックは本来、非常に安定したポリマーであること、つまりいつまでも分解しない耐久性が大きな利点でした。しかし近年ではプラスチックゴミの処理が問題化され、分解性がすぐれたプラスチックが求められていますが、分解性がよくなれば安定性が失われ、プラスチックとしての実用性が低下します。

千葉大学は、東京工業大学とともに、植物由来のポリ・イソソルビド・カーボネート(PIC)が、普段は非常に安定しているものの、アンモニアで尿素と糖アルコールに分解され、しかもまるごと肥料になることを確認し、この2つの矛盾する課題の解決の緒を掴みました。しかし、PICはそのままでは脆く、実用的なプラスチックにはなりません。そこで今回、植物由来モノマーDBMをポリマーの鎖に加えることで、プラスチックとして求められる強度や機能を与える方法を発見したのです。
蛍光性ボロン酸を加えて蛍光性をもたせた機能化の例(左)、分解生成物を肥料に用いたシロイヌナズナの生育。分解生成物を加えたものは葉が多い(右)。

蛍光性ボロン酸を加えて蛍光性をもたせた機能化の例(左)、分解生成物を肥料に用いたシロイヌナズナの生育。分解生成物を加えたものは葉が多い(右)。


日本のプラスチックゴミの回収率は80パーセントを超え、リサイクルが確立されているように見えますが、別のプラスチック製品に生まれ変わっているのは3割弱に過ぎず、約6割は燃やしてエネルギーを回収するサーマルリサイクルという形で処分されています。リサイクルとは言え、大量の二酸化炭素を排出します。
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こうした現状を踏まえると、植物由来の循環型プラスチックの実用化が急がれます。この研究は、そんな循環型の未来に道を開くものとなりました。「ここで提案する高分子材料設計が、プラスチックの廃棄問題と人口増加による食料問題を同時に解決する、革新的なシステムへと昇華されることを期待しています」と同大学は話しています。

プレスリリース

文 = 金井哲夫

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