食&酒

2023.05.28

「問題:生産国としてのギリシャを評価せよ」 実業界も注目する難関ワイン資格

ワインエキスパート水上彩氏。WSET最上位Level 4 Diplomaも有する

L3はスクールで対策、L4の勉強はオンラインのみ かかる時間や費用

独学で受験が可能なソムリエ・ワインエキスパート試験と異なり、WSETは認定校での資格取得コースへの申し込みが必須だ。L1~L3はスクールでの講義があるが、L4では、基本的にオンラインコースで各自勉強することになる。標準的な取得時間はだいたい18カ月から3年。オンラインコースのスケジュール通りに進み、各試験に一発合格すると1年半で取得可能だ。最短で1年強で取得した強者もいれば、マイペースに5年以上かけて取得する人もおり、生活スタイルや仕事の状況によって人それぞれだ。

勉強時間で見ると、全資格を取得するのに必要な時間は合計500時間以上とされている。だが、筆者の場合は、D3の勉強だけで700時間以上、すべてを合わせると1000時間は優に超えていた。最低でも週20時間程度の勉強時間が確保できないと、合格は難しいかもしれない。実際、受験生が最も苦労するのが、時間のやりくりだろう。家庭や仕事と両立するため、早朝に勉強したり、飲み会を減らしたり、なんとか時間を捻出して合格したという人が多い。

学習の見える化としてアプリ(写真はStudyplus)を利用するのもおすすめだ

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時間の確保と同時に先立つものも必要だ。L4の取得にはかなりのお金がかかる。登録料66000円、2年間オンライン受講料291500円、D1受験料24750円、チュートリアルプログラム受講料70400円、初期費用で452650円(税込)。さらに各試験の受験料もかかってくるため(再試の場合は追加)、最低でも合計約60万以上の投資が必要だ。

ちょっと厳しい……という人は、スカラシップを狙う手もある。WSETでは、成績優秀者には奨学金や海外ワイン研修を進呈するスカラシップ制度を設けている。

中学英語をやり直してから勉強すべき?

L4受験を検討している人にとって、ネックとなるのが英語だろう。L3から英語で受験すべきなのか迷う人も多いに違いない。これも様々なケースがあるので、一概にどちらがいいとはいえない。「L4まで進むつもりなら、L3も英語で受験すべき」という人もいれば、「まずはしっかり日本語で内容を理解する方が大事」という人もいる。個人的には、ワイン用語は日本語に訳すと逆にややこしいものが多いし、英語に苦手意識がある人は、L3の時点でしっかり英語のワイン用語に慣れておいた方が良いと思う。一方、私の知人は、L3を日本語で受験し見事にスカラシップを受賞、その後好成績でL4にも合格した。英語でL3を受験しないとL4に受からないわけではないので、よく検討したい。

ただ、「もう少し英語力をレベルアップしてから、受験しよう」という考え方は少々もったいないかもしれない。ワインの専門用語は日常英語とはやはり違うので、スピーキングやリスニング力とは切り離して考えるべきだ。

必要とされるTOEIC820点以上の英語力がなくても、英語テキストを読む忍耐力がある・ワインの専門用語を英語で覚えられる、英語で書く練習ができるといった基礎的な英語力があれば、個人的には大丈夫だと考える。また、YoutubeやPodcastなどでワインの番組もたくさんあるので、英語でワインを無理なく学ぶのがおすすめだ。
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取材・文・写真=水上彩 編集=石井節子

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