政治

2023.04.25

原因不明の火災が相次ぐロシア、背後にいるのは誰なのか?

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ロシアの首都モスクワで5日、煙が上がった。国営タス通信は、小規模な火災が一時的に発生したがただちに消火活動が行われ、犠牲者は出なかったと報じた。火災が発生したのが国防省の本部であること、しかもその建物が大統領府(クレムリン)の目と鼻の先であることなどは単なる偶然なのかもしれない。だが、ロシアでは最近、大規模な火災が頻発している。公開情報に基づく分析手法「オープンソースインテリジェンス(OSINT)」機関のモリファルがその詳細を伝えている。

ウクライナ侵攻の開始前まで、モリファルは市場や企業、個人について報告する営利企業だった。ところが現在、同社はOSINTを活用し、ボランティアでウクライナを支援している。同社はこれまで、戦争犯罪者の特定やロシアのプロパガンダに対する反証などを行ってきた。また、1月にはロシアで発生した大規模火災の件数を分析。特に昨年11月と12月には火災発生率が26%上昇し、指数関数的に増えていると指摘した。

モリファルのダリア・ベルビツカはフォーブスに「ロシアの軍事工場や発電所の火災に関する情報の取り扱い方に小さな変化が起きている」と証言する。「向こうの報道機関は、こうした出来事を以前ほど報じていないようだ。しかも、たとえ報道されたとしても重要な内容が含まれていなかったり、被害の程度が軽んじられていたりする。幸いなことに、モリファルは必要なアクセス権を持つ信頼できる情報源から詳細な情報を入手することができた」

同社の最新の報告書からは、ロシアで火災の発生件数が急激に増加し続けていることが明らかになった。昨年通年の火災発生件数が414件だったのに対し、今年1~3月の3カ月間ですでに212件に上っているのだ。いずれも数百万ドル(約数億円)規模の被害が出ており、経済がすでに低迷しているロシアにとっては打撃となっている。

モリファルによると、火災が最も多く発生しているのは倉庫や工場、商業施設のほか、石油や天然ガスの貯蔵施設やパイプラインだ。火災の一部は、軍需企業の工場やウクライナとの国境に近いロシア南西部ベルゴロトにある弾薬庫などの軍事施設で発生しているが、ほとんどの場合、明白な軍事的関連性はなかった。

火災が最も集中している地域はモスクワで、昨年国内で発生した全414件の火災のうち、約1割に相当する40件が同市内で発生している。その傾向は今年に入ってさらに強まり、212件の火災のうち、16%以上に当たる35件がモスクワで発生。うち20件が倉庫、6件が工場で起きている。
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翻訳・編集=安藤清香

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