ウクライナ側の活動としては、同国軍を支援する現地のカムバックアライブ財団がクラウドファンディングで資金を調達した「ブラックボックス」という取り組みがある。この活動で4000万フリヴニャ(約1億4600万円)以上の資金が集まり、同財団は昨年10月「ロシアの攻撃力を低下させることができる装備を購入し、ウクライナ国防省の国防情報部に引き渡した」と報告した。
一方、ウクライナ国防省で国防情報部長を務めるキリロ・ブダノウ少将は「守秘義務の関係で今回の協力の詳細については公表できないが、その成果は必ずや戦場で明らかになることだろう。私たちの試算では『ブラックボックス』と呼んでいるこの取り組みにより、10月だけでロシアに数百万ドルの損害を与えたことになる。支援者や関係するすべてのウクライナ人とともに、私たちは敵の戦闘能力に影響を与え続ける」と説明した。
モリファルによると、ロシアで火災が急増したのは、謎のシステム「ブラックボックス」の納入時期と一致しているという。
ところで「ブラックボックス」とは一体何なのだろうか? カムバックアライブ財団はこれ以外にも「実際の戦場でロシア軍に損害を与える」攻撃型サイバー戦争能力や長距離自爆型無人機などに取り組んできた。いずれの技術も遠方から火を起こすために使われるかもしれないが「ブラックボックス」がどちらの技術にも含まれていないことは、これが完全に別物であることを示している。
ロシアの報道機関は戦線後方で起きた火災や爆発を、たばこの火の不始末によるものだと伝えているが、ウクライナ側はこれを一笑に付している。確かにロシアには、ガソリンスタンドで給油している最中にたばこに火をつけようとして炎上した男性のように、不注意な喫煙者もいる。しかし、これでは火災の発生件数が急増している原因を説明できない。
モリファルのベルビツカは「軍事施設での火災が増加する傾向が続けば、国家がそれを隠蔽しようとする可能性があり、こうした出来事に関する報道はさらに限られてくるかもしれない」と語る。「何が起きているのか、それがロシア人の安全にどのような影響を及ぼすのか、一般市民の間にさらなる懸念が生じる可能性もある」
原因は謎のままだ。だが、この状況が続けばロシア当局は向こう数カ月の間に、この火災の背後に誰がいるのか、あるいは何があるのかを突き止める機会が増えることになるはずだ。
(forbes.com 原文)