今回は、ワインエキスパート取得を経て、WSET Level 3、Level 4を取得した筆者が、WSETの資格や取得するメリットについてご紹介したい。
WSETにはL1~L4のレベルがある
WSETとは、Wine & Spirit Education Trustの略で、ロンドンに本部を置くワインアカデミー。1969年に創設され、現在は世界70カ国に認定校、15言語10万人以上の受験生を持つ世界最大の教育機関だ。ちなみに読み方は、「ダブリュー・エス・イー・ティー」。「ダブリューセット」でも「ウェスト」でもないのでご注意。Level 1(L1)からLevel 4(L4)まで4段階のレベルに分かれ、最上位のL4 Diplomaに合格すると晴れて「卒業」となる。Diploma保有者は日本では現在119名(2023年4月時点)しかいない難関資格だ。そのうち約半分はワイン業界以外のビジネスパーソンが占める。一方、世界におけるDiploma受験者数はここ20年で約3倍に増え、受験者も合格者も右肩上がりで増加している。日本でも少しずつ認知度が上がり、近年は受験者が増加中だ。国内で唯一L4を受験できるキャプランワインアカデミーによると、前回の2023年1月スタートのコースには、例年の2倍の申し込みがあったという。
ソムリエ/ワインエキスパート試験との違いは?
それではいざ「ワインを学びたい」と思ったときに、二大資格であるJSAとWSET、どちらを選べばよいのだろうか。まずソムリエ・ワインエキスパート資格は、日本ソムリエ協会(JSA)が認定する日本独自の資格であるのに対し、WSETは世界共通の資格であるという大きな違いがある。
難易度でいうと、WSET L3がJSAソムリエ・ワインエキスパート試験と同レベルとされているが、実はこの二つはワインに対するアプローチが全く異なる。もともとサービスマンを育成することを目的としたJSAの試験では、サービスに必要な「知識」を学ぶことが第一の目的だ。そのため試験でも「何を知っているか(What)」が重視され、絶対的な暗記量はWSETよりも断然多くなる。
一方、もともとワイン・スピリッツの流通業者への教育のために創設されたWSETでは、サービスに必要な知識だけでなく、なぜワインがそのスタイル・品質・価格になるのかといった論理的思考(Why&How)が重視される。L3・L4の記述問題では、Cause & Effect(原因と結果)がしっかり書けていないと、点数が伸びないのだ。L4になるとさらにビジネスの観点が加わり、例えば「ワイン生産国としてのギリシャの長所と短所を評価せよ」といったSWOT問題も出題される。