食&酒

2023.05.28

「問題:生産国としてのギリシャを評価せよ」 実業界も注目する難関ワイン資格

ワインエキスパート水上彩氏。WSET最上位Level 4 Diplomaも有する

WSETのテイスティングでは独自のテイスティング・メソッドSAT(Systematic Approach to Tasting)に沿ってワインを学ぶことになる。これは色・香り・味わいといったワインの要素を分析したうえで、品質評価を行う方法。テイスティング試験においては、ブラインドでワインが供されるが、産地や品種名を正確に当てることよりも、なぜその結論に至ったのかという論理性・整合性が重視されるのがポイントだ。

また、第三次試験に実技試験があるソムリエ試験(愛好家向けであるワインエキスパートは実技試験なし)に比べ、WSETでは実技試験は課されていない。

WSET独自メソッド SATテイスティング ※WSET公式HPより抜粋

WSET試験の難易度は?

WSETではそれぞれL1~4まで、受講者のレベルに合わせて、初心者からワイン業界のプロフェッショナルまで学べる体系的な資格となっている。L1は初めてワインサービスや販売をされる方向けのワイン入門コース、L2は初心者~中級者向けで、ワインの基礎知識(What)を体系的に学び、「ラベルを読み解く」ことを目的としたコースだ。

上級者向けのL3では、なぜそのワインのスタイル・品質・価格になるのか(Why)を学び、「ワインを解明する:スタイルと品質をひも解く」ことを目的としている。約半年間、ワインスクールで17回のコースを受講し、年2回試験を受けるチャンスがある。マークシート式のL2に比べると、L3の試験は記述問題が加わるため一気に難易度は上がる(キャプランワインアカデミーでの資格取得率:55%)が、きちんと勉強すれば十分合格できる資格と言っていいだろう。ただし、過去問や想定問題集が豊富なソムリエ/ワインエキスパート試験と違いWSETでは過去問が非公開のため、情報収集が鍵となる。

最難関のL4は、Level3をさらに深掘りし、ワインビジネスの視点も盛り込んだ論理的思考(How, Analysis)を学んでいく。資格条件はWSET Level3に合格していること、そしてオンラインで勉強するため、基本的なITリテラシーを有していること。日本語でも受験可能なL1~L3と違いすべて英語での受験になるため、一定の英語力を有していることで、必要な英語レベルはTOEIC820点以上(IELTS 6.5以上)とされている。英語力については、また後ほど詳しくお伝えしたい。

L4には、D1~D6と呼ばれる6つのユニットがあり、それぞれ試験日も試験内容も異なる。55%以上の正答率で、すべての試験にパスしてようやく合格となる。大学の学位を取得するような感覚といっていいかもしれない。

※WSET公式HPより抜粋

※WSET公式HPより抜粋


6つのユニットの内容は、D1:ワイン生産(栽培・醸造)、D2:ワインビジネス(小論文筆記試験)、D3:世界のワイン、D4:スパークリングワイン、D5:酒精強化ワイン、D6:3000字の論文提出だ。試験はすべて英語で、D3,D4,D5の試験には記述試験とテイスティング試験が含まれる。各試験にも比重があり、50%の比重を占めるD3の試験は範囲が広く、たいていの受験生が苦労するパートだ。

難関のD3合格通知。テイスティングと筆記試験の両方に合格してPassとなる

難関のD3合格通知。テイスティングと筆記試験の両方に合格してPassとなる

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取材・文・写真=水上彩 編集=石井節子

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