TikTok親会社バイトダンスが広げる情報監視体制、ウイグルからトランプまで

Editorial credit: Boumen Japet / Shutterstock.com

ソーシャルメディア企業の例にもれず、動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」の親会社である中国のテック大手ByteDance(バイトダンス、字節跳動)にも、プラットフォーム上でユーザーが見たり聞いたりできないようにしている「禁止ワード」のリストが存在する。通常、こうしたコンテンツモデレーション(投稿の監視や削除)では、ヘイトスピーチ、子どもの安全を脅かすもの、テロリズムを助長するものなどが主な対象になる。ところがバイトダンスの場合、モデレーションの対象はそうした一般的な取り締まりの範囲をはるかに超えているとみられることが、フォーブスによる調査でわかった。

入手した社内の記録文書からは、バイトダンスが中国政府に関するものはいうに及ばず、米中貿易、ドナルド・トランプ前米大統領、中国で迫害されている少数派エスニック集団ウイグル人、さらには「YouTube(ユーチューブ)」など米国でのTikTokの競合相手に関する投稿まで監視の対象にし、場合によっては削除している実態が浮かび上がった。

バイトダンスの社内文書によると、同社には、運営する複数のプラットフォームで使われた「センシティブな言葉(中国語で「敏感詞」)」を追跡するツールがある。こうした言葉のリストには次のようなものがある。

「TikTokの対人関係のセンシティブな語彙」
「トランプに向けられた禁止用語」
「プーチン向けられた禁止用語」
「TikTokの日本語コメントで削除する言葉」
「チベット地域におけるTikTokの音声でセンシティブな言葉」
「習と彭(編集部注:中国の習近平国家主席と彭麗媛夫人を指すとみられる)に関する特別禁止用語」
「新疆における抖音(編集部注:TikTokの中国国内版)動画のセンシティブな言葉」
「ウイグル人・漢民族カップルの主題化戦略」
「中国の戦略政策に関する主題戦略」
「現地生活:台湾独立と香港」
「YouTubeの国内監視」
「企業製品のネガティブな評価に関するセンシティブな語彙」
「TikTokの政府問題に関するメディアトピック語彙」

バイトダンスとその子会社、北京吉雲互動科技(Jiyun Hudong)の中国在勤の従業員らによって作成されたとみられる社内手引きによれば、これらのリストは「よく使われ、リスクが高く、重要なセンシティブな言葉」の「グローバルな基本語彙」や「完全に分類された」法に触れる言葉を含む「世界的によく使われる語彙」を挙げたもの。こうした言葉は「会社の安全や評価、収益にリスクをもたらす可能性がある」ことから、バイトダンスが手がける全製品でそうした言葉の検出や評価、呼び出しをするシステムとして、2017年にこのツールが開発されたと紹介されている。

手引きには「ビジネスサイドが優先されるものとする」というくだりもある。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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