バイトダンスの中国従業員もTikTokのツール管理に関与
だが、TikTokとバイトダンスの現従業員や元従業員数十人の証言によると、両社が別々の会社だというのはほとんどうわべだけの話にすぎない。フォーブスが精査した数百の文書でも、情報やユーザーデータ、そしてセンシティブなキーワードの検出システムを含むツールへのアクセスに関して、両社の間で担当する部門や職務は分けられていなかった。文書からは、TikTokの従業員が2022年にバイトダンスのツールにアクセスしていたことだけでなく、TikTokのツールの管理に携わっている人のなかに、中国国内で勤務するバイトダンスの従業員が複数含まれていることもわかった(ファバザはTikTokの従業員がツールにアクセスしたかどうかは、名前がわからないので検証できないと述べている)。トロント大学の調査研究機関「シチズン・ラボ」は2021年に公表した報告書で、TikTokと抖音は「ソースコードの多くの部分を共有」しており、共通のコードベースから開発されて市場に応じて調整が加えられているだけだという調査結果を明らかにしていた。この報告書では「こうしたカスタマイズの一部は市場ごとにオンにしたりオフにしたりできる」としているが、フォーブスが取材した専門家たちは、抖音の制限的な設定をTikTok向けに解除するのはほぼ不可能だと口をそろえる。
文書からは、バイトダンスのモデレーションツールやその他の社内用プログラムがセンシティブな言葉の「ヒット率」に関するデータを収集していることも判明した。集められたデータには、そうしたコンテンツを投稿した米国ユーザーに関する情報も含まれていた。TikTokやその他のバイトダンス製品に言及しているある文書には、モデレーションシステムと「新たなテキスト検出サービス」を連携させた最近のアップグレードによって「センシティブな言葉のヒット記録」をリアルタイムで追跡・解析するのが容易になったという記述がある(プロジェクトの担当者の少なくとも1人が北京在勤のエンジニアであることもわかる)。TikTok広報のファバザは、ヒット率に関するデータの追跡は「たんにパフォーマンスの理解を助けてくれるもの」と説明し「アクセスは制限されている」とも主張している。
中国政府はソーシャルメディアを活用して、中国共産党に批判的な意見をネット上で公言した米国在住者を標的にしてきた。対象者には、1989年に北京の天安門広場で起きた市民の大量虐殺事件(天安門事件)を追悼した人も含まれる。米司法省は4月、こうした監視・抑圧に関与したとして中国公安省の職員ら数十人を訴追している。
TikTokの周受資(ショウ・ジ・チュウ)最高経営責任者(CEO)は3月下旬、米国議会で初めて証言し、米国ユーザーのデータは中国からしっかり遮断できる、米国ユーザーが閲覧するものが中国の政権によって恣意的に変えられることはないと、議員たちを安心させようとした。議員たちは、中国政府は中国共産党にとって不都合なコンテンツも含めて、TikTokで表示されるもの(あるいは表示されないもの)に対して影響力を行使できるのかという点を繰り返しただしたが、周はそうしたことはあり得ないと強調した。
「わたしたちが中国政府の要請を受けてコンテンツを宣伝したり削除したりすることはない」。周は下院エネルギー・商業委員会のキャシー・マクモリス・ロジャース委員長(共和党)にそう断言した。「いかなる政府によるいかなる操作からもこれ(TikTok)を守るため【略】不断に取り組んでいく所存だ」