小林:ある人との出会いが人生を変えたんです。現在ISAKの理事で共同創設者の谷家衛さんと、2007年にディナーの席で初めて会いました。自分の経験や、社会問題や学校のあり方について考えを語っていたら、谷家さんが「一緒に学校を作ろう」と言ってくれたのです。え、学校って個人が作れるのだっけ?と思いましたが。
私は大学院に行くまで外資金融やスタートアップでものすごく早いペースの中でエキサイティングに仕事をする20代を過ごしていてたのですが、そこでの経験を教育の世界に活かせるのではないかと。すべてここに繋がっていたのかもしれない、と。その日は眠れなくて、翌日谷家さんに電話をして、やってみたいと伝えました。学校づくりに取り組むため、2008年8月にUNICEFを退職してフィリピンから帰国しました。
ところが9月にリーマンショックが起こり、谷家さんが学校のために出すと言ってくれていた20億円が200万円になってしまったんです。衝撃のスタートです。でも、この最悪の事態さえも今振り返ると、良い意味での大きな転機でした。私たちは2008年から2012年までの4年間、資金集めという地道なフェーズに入り、100人のファウンダーに巡り合い、その方々からのご支援で学校をつくることができたのです。
今ではその100人の方々から輪が広がっていき、1000人を超える方々にご支援いただいています。あの時リーマンショックが起こらなければ、こうしたムーブメントは生まれなかったでしょう。
もうひとつよかったことは、2010年に初めてサマースクールを実施したことです。友人で起業家の佐藤輝英君が、起業家の鉄則は「アーリー・スモール・サクセスだ。寄附を募るのであれば小さくてもいいから初期にできるだけ早い段階で急に何かしら成功を見せること事例を示さなくては」だと。彼が何回も言うので、それじゃあと企画したのがサマースクールでした。これも大きな転機になりました。
2週間のサマースクールとは言え、自分たちの教育の概念や理想をカリキュラムに落とし込み、世界中から先生を連れてきて、国内外から生徒を集めて実現するのは、理想を語るのとは別次元の話でした。それを小さなスケールでも実行したことが、その後の教員や生徒の募集や、カリキュラム開発といった、資金集め以外のことに対する大きな学びになりました。
中道:そこから飛躍的にいろいろなことが始まるのですね。次回はこれからのことも含めて聞かせてください。