マーケティング

2023.03.17 09:00

建築を学び日本酒の世界へ 永井酒造六代目蔵元の挑戦

永井酒造代表取締役 永井則吉

日本の企業が世界に出るときに足りないものは何か。そのひとつが“クリエイティビティ”だとしたら、どうしたら乗り越えていけるのか。


Kitchen & Companyの中道大輔がナビゲートするPodcast「VISION TO THE FUTURE」とForbes JAPANがコラボレート。国内外で活躍する“視点”のあるゲストとともに、考え、発信していく。

第29回配信は永井酒造代表取締役で六代目蔵元の永井則吉がゲスト。日本酒の新たなカテゴリーとして“スパークリング日本酒”を開発、AWA SAKE協会を設立して奮闘する永井の原動力を聞いた。


中道:今回は永井酒造代表取締役で六代目蔵元の永井則吉さんをお迎えしてお届けします。永井さんは1972年、群馬県川場村生まれ。東海大学で建築を学ばれ、95年に実家の永井酒造にはいられました。

2013年に社長に就任され、六代目蔵元に。2016年にはスパークリング日本酒を世界に発信するAWA SAKE協会を設立し初代理事長に就任。今まさにいろいろなことに挑戦されていますが、大学では建築を専攻されていたんですね?

永井:そうなんです。僕は次男坊で、実家は長男が継ぐからお前は家を出て行けと言われていたので。高校時代は勉強嫌いの落ちこぼれで、唯一興味を惹かれたのが建築だったんです。それが高3の2学期の終わりぐらいで、そこから猛勉強をしてやっと入れたのが東海大学でした。

当時の東海大学は妹島和世さんや隈研吾さんといったそうそうたる人たちが非常勤講師として在籍されていて、めちゃくちゃ楽しくて、寝食忘れるくらいどっぷりはまりました。

その頃の僕は安藤忠雄さんが大好きで、安藤忠雄建築を見るためにバックパッカーでヨーロッパを一人で旅しました。インターネットがない時代でしたから、トーマス・クックと『地球の歩き方』を片手に約2カ月半で11カ国30都市ぐらいまわりました。

中道:そこから酒づくりに行ったのは?

永井:永井酒造を継いだ兄が水芭蕉ブランドを立ち上げて、蔵を新しくすることになったんです。「お前も蔵づくりのチームに入らないか」と言われて。大学2年生だったのですが、蔵の設計チームに入れてもらえるのならぜひやらせてくれと。

最初は全国の酒蔵を見学させてもらったり、動線とか機械の配置とか素材とか、デザインなどをやっていました。その後、酒造りを手伝いながら空間づくりを考えていくなかで、発見したんです。建築のデザインを考えることと酒造りは全く一緒じゃないかって。そしたらなんだか酒造りをしたくなっちゃったんですよね。

中道:どんな共通点があったんですか。

永井:建築は0から1を生み出します。酒造はどこにでもある米と水から自分たちのオリジナリティのある1を生み出します。そこがすごく似ていると思ったんです。

デザインを学んだことや海外をまわった経験は今の僕のベースになっていて、酒造りで一番大事にしているのは、アート、サイエンス、クラフト、この3つのバランスです。

兄は15年前から父がつくった道の駅、川場田園プラザの社長を兼任していたのですが、10年前に永井酒造を僕に任せてそっちに集中したいというので社長を引き継ぎました。
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文=久野照美 編集=鈴木 奈央

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