特に人気の商品は、全身の血行を促進させる特殊繊維を材料にしてつくられた疲労軽減ウェア「BAKUNE」だ。2022年の売り上げが昨年比で10倍に増加し、販売開始から約2年で15万枚が売れたという。
TENTIALは2018年の創業。足の不調を感じた時にLINEで気軽に相談できる「足の相談所」からビジネスをスタートさせた。商品としての第1弾は、2019年8月にリリースした指にかかる力のバランスを保つことで疲労を軽減するインソール「TENTIAL ZERO」だった。
その後も次々に新たな商品を生み出し、現在はその数は50種類以上。主戦場はECだが、家電量販店やマッサージ店などでもTENTIALの商品は販売されている。
順調に売り上げをつくっていることを投資家も評価しており、3月1日には10億円の資金調達をしたと発表した。ニッセイ・キャピタル、楽天キャピタル、豊島(繊維事業などを手がける)のCVC、TBSイノベーションパートナーズ、PARAMOUNT BED Healthcare Fundから出資を受けた。
健康につながるウェアなどの商品は、競合社は多々あるが、そのなかでもTENTIALの商品が注目されている理由には、同社代表の中西裕太郎(なかにし・ゆうたろう)が掲げる社会に対する思想があるという。
アスリートネットワークを活用し、商品開発
TENTIALの強みの1つは、アスリートを巻き込んだ商品開発だ。社内にもスポーツキャリアを積んできた社員が多く在籍するだけでなく、プロテニスプレイヤーの西岡良仁や元ガンバ大阪のプロサッカー選手・播戸竜二がアドバイザーという役職で参画している。また2022年4月には、元サッカー日本代表の李忠成氏と、タンパク質を効率的に吸収する栄養補給ゼリーを企画した。
他にも卓球の平野美宇など現役アスリートのスポンサーを務めるほか、京都大学アメリカンフットボール部や筑波大蹴球部など、大学のスポーツチームとの契約も結んでいる。
こうして有機的に張りめぐらされたネットワークを活用することで、アスリートの知見を商品開発に落とし込むことができる。そして試作品ができると、すぐに試してもらい、フィードバックを受けて、迅速に商品の検証改善を行っていくのだ。
とはいえ、中西は「TENTIALは、スポーツメーカーでもスポーツブランドでもありません」と主張する。同社が掲げるのは「ウェルネス」(自分が望むライフプランを実現させ、心身ともによりよく生きること)という思想だ。