だれもが自分らしく生きられる「共生社会」への道のりはまだまだ遠いが、思いをしっかりと受け継ぐ次世代も登場している。
16歳少女の胸の内に息づく「トシちゃん」
電動車いすで通学する静岡県掛川市の掛川東高校2年、佐野夢果さんは、地元ではかなりの有名人だ。同市内には、車いすで生活する横山博則さんが経営する駄菓子屋「横さんち」があり、子どもたちと障害のある人の交流の場として知られているが、その公式グッズが佐野さんのデザインを基にした「カラフルスライムズ」の12種類の妖怪たち。
情報通の「ピピ」、嫌味が大好物の「ウイン」、ダンスが大好な「ドドン」など12種類の妖怪たちが描かれたTシャツや靴下、帽子などの商品が販売されている。話題を呼び「静岡県SDGsスクールアワード2022」のステッカーにも採用された。さまざまな色、形の妖怪たちの多様性が、持続可能な社会の創り手の育成を目指すアワードにぴったりだった。
もともと絵が好きで「高校受験の息抜きにスマホのアプリで描き貯めました。多様性のイメージは、ごちゃまぜ運動会に影響されていますね」と佐野さん。
小学校5年のときに、押富さんが代表理事を務めるNPO法人ピース・トレランスの第1回ごちゃまぜ運動会(初回の記事で紹介)に参加した。車いすを連結させて競走したり、20台で綱引きをしたりと「みんなが一緒に盛り上がれて、すごく素敵だった」。
(初回:ある日、呼吸を奪われた。それでも私は楽しむ)
その1カ月前には、校長先生に談判して、小学校の福祉教育の授業で押富さんを講師に招いている。
「車いすの体験とかの授業よりも、トシちゃんの話をみんなに聞いてほしかったんです」
佐野さんは、幼少期からの難病で歩くことができない。小学校にエレベーターがないことを理由に、特別支援学校を勧められたが、両親や主治医が教育委員会と交渉を重ね、地域の小学校に進むことができた。やがてエレベーターも設置された。